斜陽街二番街。
レンタルビデオ屋がある。
ここの貸し出し映像は、かたよっている。
基本的にホラー中心である。
店主が、ホラービデオにしか、閃きがないのだ。
ビデオに触れると、ある程度内容が把握できる。
触れただけで、そのビデオの恐怖を閃くのだ。
そして、お客におすすめを閃けるのが、
ホラービデオしかわからないらしい。
そのくせ、レンタルビデオ屋の店主は、怖がりだ。
パッケージと、目を合わせるのも、怖いらしい。
毎日ホラービデオに囲まれて、
レンタルビデオ屋は営業している。
レンタルビデオ屋のもとに、
ちょっと前に小包が届いた。
店主は、包装を解かないまま、小包を放置した。
新しい恐怖に触れるのが苦手なのだ。
布団をかぶったり、落ち着きなくおどおどして、
やっと店主は包みを解いた。
出てきたのは、何かの建物の写真のパッケージ。
裏を見れば、学校であった怖い話らしい。
あとはビデオテープに触れれば、
恐怖の内容を閃ける。
店主は、大きく深呼吸した。
「よし」
小さく気合を入れると、ビデオテープを取り出した。
閃く、恐怖。
一瞬のような永遠のような映像と恐怖、
悲鳴すら上げられない。
怖い、怖いのに、そこから目を離せない。
怖いものが流れ込んでくる!
怖い怖い!
視覚や聴覚がおかしくなりそうになったとき、
ようやく閃きが収まった感覚になる。
店主は頭を振った。
ビデオテープを戻し、ため息をつく。
そして、恐怖の質を思い出す。
「廃校…か」
使われなくなった木造校舎、
そこに染み付いた噂の数々。
あるいは、劣化したコンクリート校舎、
学生たちが流れていく中に、
沈んで染み付いた恐怖。
ありえないとされているもの。
ただの噂とされながら、恐怖の対象にされたもの。
それは卒業する生徒たちの残した一部。
在校中は、隣り合わせにいたもの。
恐怖は受け継がれていき、
やがて廃校とともに取り壊される。
店主は、パッケージをしげしげと見てみた。
木造校舎らしい。
店主はなんとなく、得体の知れない恐怖を感じた。
ぶるっと身震いする。
「気分転換に出かけるかな…」
店主はポツリつぶやくと、ふらりと外に出た。
恐怖ばかりでも大変らしい。