目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第290話 廃校

斜陽街二番街。

レンタルビデオ屋がある。

ここの貸し出し映像は、かたよっている。

基本的にホラー中心である。

店主が、ホラービデオにしか、閃きがないのだ。

ビデオに触れると、ある程度内容が把握できる。

触れただけで、そのビデオの恐怖を閃くのだ。

そして、お客におすすめを閃けるのが、

ホラービデオしかわからないらしい。

そのくせ、レンタルビデオ屋の店主は、怖がりだ。

パッケージと、目を合わせるのも、怖いらしい。

毎日ホラービデオに囲まれて、

レンタルビデオ屋は営業している。


レンタルビデオ屋のもとに、

ちょっと前に小包が届いた。

店主は、包装を解かないまま、小包を放置した。

新しい恐怖に触れるのが苦手なのだ。

布団をかぶったり、落ち着きなくおどおどして、

やっと店主は包みを解いた。


出てきたのは、何かの建物の写真のパッケージ。

裏を見れば、学校であった怖い話らしい。

あとはビデオテープに触れれば、

恐怖の内容を閃ける。

店主は、大きく深呼吸した。

「よし」

小さく気合を入れると、ビデオテープを取り出した。


閃く、恐怖。

一瞬のような永遠のような映像と恐怖、

悲鳴すら上げられない。

怖い、怖いのに、そこから目を離せない。

怖いものが流れ込んでくる!

怖い怖い!


視覚や聴覚がおかしくなりそうになったとき、

ようやく閃きが収まった感覚になる。

店主は頭を振った。

ビデオテープを戻し、ため息をつく。

そして、恐怖の質を思い出す。

「廃校…か」

使われなくなった木造校舎、

そこに染み付いた噂の数々。

あるいは、劣化したコンクリート校舎、

学生たちが流れていく中に、

沈んで染み付いた恐怖。

ありえないとされているもの。

ただの噂とされながら、恐怖の対象にされたもの。

それは卒業する生徒たちの残した一部。

在校中は、隣り合わせにいたもの。

恐怖は受け継がれていき、

やがて廃校とともに取り壊される。


店主は、パッケージをしげしげと見てみた。

木造校舎らしい。

店主はなんとなく、得体の知れない恐怖を感じた。

ぶるっと身震いする。


「気分転換に出かけるかな…」

店主はポツリつぶやくと、ふらりと外に出た。

恐怖ばかりでも大変らしい。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?