斜陽街三番街。
がらくた横丁近く、まんぷく食堂のある広場。
もとは空き地だが、
今は、おじいさんとおばあさんで露天の食堂を営んでいる。
斜陽街の子どもたちが、集まることもある。
そんな時は、おじいさんとおばあさんで、
手作りのお菓子をあげることもある。
駄菓子よりあったかいもの、
焼き菓子だったりするもの、
ほこほこ甘いもの。
そんなものが多い。
またあるとき。
おじいさんが、大きな箱を引っ張り出した。
子どもたちは興味しんしんで見ている。
「あれをやるんですね」
おばあさんは、わかっている。
おじいさんは、いつもの仏頂面のままうなずく。
そして、箱から取り出したのは、かき氷の機械だ。
横にハンドルがついている、ちょっと大型のものだ。
「…がらくた横丁の連中も呼んで来い」
おじいさんは、ぼそっとつぶやく。
おばあさんは、にっこり笑ってうなずいた。
おじいさんは、機械に大きな四角い氷をセットする。
器もセットすると、
おもむろにかき氷を始める。
ごりっ
しゃーこしゃーこしゃーこ…
雪のように氷が舞い落ちる。
きらきらはらはらと。
淡く真っ白い氷。
美しい氷の山が作られる。
おじいさんはちょっとだけ形を整えると、
仏頂面のまま、器を取り出した。
おばあさんが受け取る。
「さぁさ、何シロップがいい?」
おばあさんが子どもに問いかける。
子どもたちがきゃっきゃとはしゃいでいる。
おじいさんは難しい顔のまま、また、氷をかく。
「どうもー。まんぷく食堂さんで、かき氷やってるんだって?」
ひょっこりやってきたのは、薬師だ。
子どもたちが色とりどりの氷を見せる。
「いやはや、きれいだねー。あ、あたしも氷ちょうだい」
「シロップはどうしますか?」
「お薬シロップ使ってみるよ。調合してみたんだ」
「おやまぁ」
おばあさんは、穏やかに驚いてみせる。
薬師は、得意げにシロップを見せる。
「苦い薬も飲めるように、いろいろやってるの」
「あらあらそうなの」
「…氷、出来たぞ」
おじいさんが、ぶすっとして氷を差し出す。
薬師は受け取ると、シロップをかけて食べだす。
子どもたちから、おかわりの声がかかる。
そんな、まんぷく食堂の風景である。