これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
重そうな鉄の扉の向こうの世界の物語。
大型飛行機の「ワイバーン」が完成した。
皆は身体を洗い、温かい食事をとった。
4人の騒がしい食卓。
微笑みのある食卓。
暖かい食卓だ。
「それで…」
団欒の中、ギアビスが切り出す。
「ワイバーンを作った理由を、話しておきたいんだ」
皆が黙った。
ギアビスは考え、話し出す。
「ワイバーンで、本当の世界の果てを見てきてほしいんだ」
「本当の世界の果て…」
パックが繰り返す。
パックは世界の果てに住もうと考えていた。
ここが世界の果てでないのなら…
「そう、パックさん、ここは本当の世界の果てじゃない…」
「じゃあ、どこなんだ?」
「わからないけれど、理論上は世界の果てじゃないんだ」
「そうか…」
と言い、パックは黙った。
「ワイバーンで世界の果てへ…」
ダットラットが、ポツリともらす。
「そう、世界の果てに行って、いろんな物を見てきてもらいたいんだ」
ギアビスが目的を告げる。
「それは軍とは関係ないですよね」
「全然関係ない。むしろ…」
「むしろ?」
「むしろ個人的なことだ。歴代のギアビスの記録に、さらに今のギアビスの記録を描きたい…」
「さらに、ですか」
「そう、新しいギアビスの情報。それを得るためにワイバーンを作ったんだ」
小さな家の外、
草原の中に大型飛行機がある。
「あの飛行機ならば、本当の世界の果てまで飛べるはず」
ギアビスは、確信を持っていた。
「あの…」
ダットラットが弱弱しく話し出す。
「あの…世界の果てへの操縦、僕にやらせてもらえませんか?」
ギアビスはうなずいた。
「ただ、一人きりの旅になるかもしれないよ」
「一人きりの?」
「ギアビスの遺産を守るものも残しておきたいしね…だから」
ギアビスが言うと、パックが顔を上げた。
パックが静かに語る。
「わしもついていく。操縦士と職人がいれば、どうにかなろう」
「ん…」
ギアビスは、うなずいた。
そして、ギアビスは視線でレオンを促した。
「俺は、ここで、ギアビスの遺産を守る。それよりギアビスは?」
「僕もここでワイバーンが帰ってくるのを待つよ」
旅に出る二人と、残る二人が決まった。
草原の中、小さな家と、大型飛行機が鎮座している。
「家族が増えてもいいよ。また、騒がしく出来る」
ギアビスは草原を見たまま、話す。
がらくたの塊の大型飛行機。ワイバーン。
それは、世界の果てを目指すものとなった。