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第173話 阻止

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

鈍い色の扉の向こうの世界の物語。


ソウとトオルは工場に入っていく。

入り口でスキャンを受けたが、

パスをする。

一応職業柄、違法なものは身につけていない。


そして扉が開くと、

ソウは手首のデータベース端末から、しゅっとコードを抜き、

工場の端末につなぐ。

工場の構造、食肉クローンの過程が頭の中にダウンロードされる。


「何かわかりました?」

「可能性だけど、DDより複雑なものが、クローンの中に混ざったみたいね」

「みたい?」

「この工場自体が何かを隠してるわね。DDをはじめとしてね。さっきの売人のアクセスも隠されてる」

「たかが食肉クローンじゃないですか…」

「おかしいのよ、落とせる情報が形式ばってて…情報も妙に古いし…とにかく自分で感じるしかないわね」

ソウが走り出す。

トオルがあわてて追う。

「どこ行くんですか!」

「クローンの工程を最初から追うわ。阻止できるなら阻止して、ちゃんと情報を手に入れたいから」

「DDのですか?」

「あるいは、DDを流す目的、それも。遅れないで!」


トオルは念のために銃を抜くと、

走る機械体のソウについて走っていった。


クローン工程を最初から追う。

工場の中を、幾つもの水槽が立ち並んでいる感じだ。

その中に幾つもの肉の塊が浮かんでいる。

肉の塊は水槽で処理を受けると、

管を通って、次の工程の水槽へと移される。


ソウとトオルはクローンの工程を最初からたどっていった。

トオルにはどれもこれも同じ肉の塊に見えた。

ソウが水槽の端末に手首からコードをつないでアクセスする。

「…やっぱり」

「やっぱり?」

「ここ、以前にもDDのアクセスがあるわ。クローンに情報が混じってる」

「全部の情報を一度に落とせないんですか?」

「ひとつひとつが独立して、なおかつ他の情報は隠している…ハッキングは足がつくようになっている…そこだけ妙によくできてるわ」

「ひとつひとつ見るしかないわけですか」

「次、行くわよ…この分だと、DD混じりのクローンは出来上がっているかもしれないけどね…」


ソウとトオルは工程を見ていく。

相変わらずトオルには、ただの肉の塊に見えた。

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