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第171話 凶

斜陽街二番街の占い屋。

ここのマダムが占いをしていた。

マダムは針占いをする。

長い針を筮竹のように使う占いだ。


金属の触れ合う音が、心地よく響く。

他の占い師たちも、

それぞれの部屋で占いや相談受付をしていた。

それはなんでもない日々の一部分でしかなかった。


しかし、マダムの目が見開かれた。

「そんな…」

と、マダムは声にする。

占い師たちはマダムがそんなこと言うなんて、と、

気にはしていたが、お客がみんな帰るまで待っていた。


そして、お客がいなくなると、

占い屋の占い師はマダムの元へ集まってくる。

「さっき、何が出たんですか?」

「マダムがあんなことつぶやくなんて」

「よっぽどのことなんですか?」

「そもそも、何を占っていたんですか?」


マダムは皆の言うことを一通り聞いたあと、

「斜陽街のこと占ってたの」

「斜陽街のこと…ですか?」

「ええ…あまりにもはっきりしたよくない卦だったから…つい」

「そんな、マダムの占いでそんなことが…」

「斜陽街を武力で制圧しようとしている…そんな感じかしら」

「なんですか、それ」

「わからないけれど、そんな凶の卦が出たの」

占い師たちに困惑が走る。

「斜陽街によくないことがおきる。外部からね」

「そうだとしても、こんな街の一つや二つ、どうして…」

マダムは溜息をつく。

「気に入らない人でもいるんじゃないかしら…」

マダムは針を調える。

「すべての人が気に入ることなんてない。すべての占いでよいことが出るとは限らない…」

「だからって…」

「だから斜陽街を守りたいのよ」


マダムは溜息をついた。

占い師たちが口々に話し出す。

「たかが占い師でどこまで守れるだろうな…」

「わからない。けれどそれを占うのも占い師じゃないか?」

「どこから攻めてくるかを予見できないか?」

「やってみよう。占い師にできること」


占い師たちは自分の部屋に戻り、おのおの占いを始めた。

マダムはその様子を見て、

凶の卦もぬぐわれるといいと思った。

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