斜陽街二番街の占い屋。
ここのマダムが占いをしていた。
マダムは針占いをする。
長い針を筮竹のように使う占いだ。
金属の触れ合う音が、心地よく響く。
他の占い師たちも、
それぞれの部屋で占いや相談受付をしていた。
それはなんでもない日々の一部分でしかなかった。
しかし、マダムの目が見開かれた。
「そんな…」
と、マダムは声にする。
占い師たちはマダムがそんなこと言うなんて、と、
気にはしていたが、お客がみんな帰るまで待っていた。
そして、お客がいなくなると、
占い屋の占い師はマダムの元へ集まってくる。
「さっき、何が出たんですか?」
「マダムがあんなことつぶやくなんて」
「よっぽどのことなんですか?」
「そもそも、何を占っていたんですか?」
マダムは皆の言うことを一通り聞いたあと、
「斜陽街のこと占ってたの」
「斜陽街のこと…ですか?」
「ええ…あまりにもはっきりしたよくない卦だったから…つい」
「そんな、マダムの占いでそんなことが…」
「斜陽街を武力で制圧しようとしている…そんな感じかしら」
「なんですか、それ」
「わからないけれど、そんな凶の卦が出たの」
占い師たちに困惑が走る。
「斜陽街によくないことがおきる。外部からね」
「そうだとしても、こんな街の一つや二つ、どうして…」
マダムは溜息をつく。
「気に入らない人でもいるんじゃないかしら…」
マダムは針を調える。
「すべての人が気に入ることなんてない。すべての占いでよいことが出るとは限らない…」
「だからって…」
「だから斜陽街を守りたいのよ」
マダムは溜息をついた。
占い師たちが口々に話し出す。
「たかが占い師でどこまで守れるだろうな…」
「わからない。けれどそれを占うのも占い師じゃないか?」
「どこから攻めてくるかを予見できないか?」
「やってみよう。占い師にできること」
占い師たちは自分の部屋に戻り、おのおの占いを始めた。
マダムはその様子を見て、
凶の卦もぬぐわれるといいと思った。