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第169話 肉

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

紅葉の描かれた扉の向こうの世界の物語。


アキとナツはレストランに入っていった。

ナツの嫌がっていた、

ここぞとばかり人脈を作ろうとしているものが、たくさんいた。

アキとナツは招待券を渡し、

それぞれの席に座った。


レストランのオーナーだというものが集まったものに向けて話を始める。

「話している間に料理はできますので、少々お付き合いください」

とのことだったが、

アキはあくびをこらえるのに必死だった。


ナツの席がアキの席から見えた。

ナツも、あくびをかみ殺しているのを見ると、

アキは笑いがちょっとこみ上げてきた。


アキは仲間を見る。

やっぱり退屈しているのかなと思ったが、

仲間たちは、なんだか目が違っている。

アキはおかしいなと感じた。

そういえばさっきから、レストランのオーナーは、選ばれたものという言葉をしきりに繰り返している。

気のせいかなとアキは聞き流した。


いよいよ料理が出てくる。

アキは話を聞き流していて知らないが、フルコースらしい。

前菜、スープ…さまざまの料理が出てくる。

確かにおいしいが、こんなのを毎日のように食べる階級でもないし、

アキとしては、招待でなかったら別にいいやというレベルだ。


それでも、他の人間の目の色が違ってきていることに気がついた。

食事が進んでいくごとに、食事にがっついているようだ。

ナツとアキ位か。静かに食べているのは。


そして、メインディッシュの肉料理が出てくる。

不思議な匂いのする肉が、

次々客に運ばれる。

それまでは、オーナーとやらが説明をしてから、お召し上がりください、だったのが、

席に肉が来た途端、

がつがつ食べ始める上流階級の人間の姿があった。

オーナーもそれを見越していたのか、何も言わない。

ただ、ニヤニヤしている。


アキは嫌な予感がした。

ナツは呆然としている。

アキとナツは肉を食べなかった。

明らかにこのレストランはおかしいと思った。

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