これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
紅葉の描かれた扉の向こうの世界の物語。
アキとナツはレストランに入っていった。
ナツの嫌がっていた、
ここぞとばかり人脈を作ろうとしているものが、たくさんいた。
アキとナツは招待券を渡し、
それぞれの席に座った。
レストランのオーナーだというものが集まったものに向けて話を始める。
「話している間に料理はできますので、少々お付き合いください」
とのことだったが、
アキはあくびをこらえるのに必死だった。
ナツの席がアキの席から見えた。
ナツも、あくびをかみ殺しているのを見ると、
アキは笑いがちょっとこみ上げてきた。
アキは仲間を見る。
やっぱり退屈しているのかなと思ったが、
仲間たちは、なんだか目が違っている。
アキはおかしいなと感じた。
そういえばさっきから、レストランのオーナーは、選ばれたものという言葉をしきりに繰り返している。
気のせいかなとアキは聞き流した。
いよいよ料理が出てくる。
アキは話を聞き流していて知らないが、フルコースらしい。
前菜、スープ…さまざまの料理が出てくる。
確かにおいしいが、こんなのを毎日のように食べる階級でもないし、
アキとしては、招待でなかったら別にいいやというレベルだ。
それでも、他の人間の目の色が違ってきていることに気がついた。
食事が進んでいくごとに、食事にがっついているようだ。
ナツとアキ位か。静かに食べているのは。
そして、メインディッシュの肉料理が出てくる。
不思議な匂いのする肉が、
次々客に運ばれる。
それまでは、オーナーとやらが説明をしてから、お召し上がりください、だったのが、
席に肉が来た途端、
がつがつ食べ始める上流階級の人間の姿があった。
オーナーもそれを見越していたのか、何も言わない。
ただ、ニヤニヤしている。
アキは嫌な予感がした。
ナツは呆然としている。
アキとナツは肉を食べなかった。
明らかにこのレストランはおかしいと思った。