これは電脳の仮想空間の物語。
少女達は戦争が行われている密林にやってきた。
戦争自体は仮想空間のイベントととしてのものなのか、
それとも、戦争ごっこのゲームとリンクしているのか、
遠くで爆発音や銃の音など、物騒な音がするくらいだ。
少女達は、ここに廃ビルがあるという情報を元に今回は集まった。
「密林に廃ビル?」
「今回の情報は、どうもあやふやなの」
「廃ビルじゃなかったりしてね」
「人が住んでたり?」
「そのときはどうなるのかな?」
「仮想廃墟と認定されなければ、イベントは起こらないわね」
「ただの廃墟設定?」
「ま、行ってみようよ」
少女達は密林を抜けていった。
仮想だから疲労はない。
途中、『政府軍の兵士』や『ゲリラの戦士』などのモンスターが現れた。
プレイヤーキャラという設定がないことを確認し、
きっちり経験値とポイントにした。
そして、少女達はコンクリートのビルを見つけた。
「廃ビルかしら」
「ずいぶん風雨に当たってはいるようね」
「入ってみよう」
コンクリートのビルは、せいぜい4階止まりのビル。
大きくはない。
アジアのマンションが、小さく、ぽつんと密林の中に立っているようだ。
少女達はビルを上る。
2階あたりに、上を通っている水道管から水が漏れて、
床のコンクリートに苔がむしていた。
上に行くと、鍵がかかった部屋もいくつかあったが、
あかねが鍵を開けても、誰もいない部屋ばかりで、
生活の痕跡はあちこちに残っていたが、
やっぱり、痕跡は痕跡だった。
「誰もいないのかな」
上まで行ってから、少女達は下に降りてくる。
部屋から仮想空間用のポイントアイテムは取った。
この位かと少女達が降りてきた2階。
先ほどの水道管から漏れた汚い水を、少女が浴びている。
シャツはぴったりと水で張り付き、
目はずっとずっと遠くを見ている。
少女は少女達を見ない。
やがて、少女は親と思われる大人に部屋に連れて行かれてしまった。
彼女は、ずっと遠くの、何を見ていたのか。
少女達はわからなかった。