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第168話 密林

これは電脳の仮想空間の物語。


少女達は戦争が行われている密林にやってきた。

戦争自体は仮想空間のイベントととしてのものなのか、

それとも、戦争ごっこのゲームとリンクしているのか、

遠くで爆発音や銃の音など、物騒な音がするくらいだ。


少女達は、ここに廃ビルがあるという情報を元に今回は集まった。

「密林に廃ビル?」

「今回の情報は、どうもあやふやなの」

「廃ビルじゃなかったりしてね」

「人が住んでたり?」

「そのときはどうなるのかな?」

「仮想廃墟と認定されなければ、イベントは起こらないわね」

「ただの廃墟設定?」

「ま、行ってみようよ」


少女達は密林を抜けていった。

仮想だから疲労はない。

途中、『政府軍の兵士』や『ゲリラの戦士』などのモンスターが現れた。

プレイヤーキャラという設定がないことを確認し、

きっちり経験値とポイントにした。


そして、少女達はコンクリートのビルを見つけた。

「廃ビルかしら」

「ずいぶん風雨に当たってはいるようね」

「入ってみよう」


コンクリートのビルは、せいぜい4階止まりのビル。

大きくはない。

アジアのマンションが、小さく、ぽつんと密林の中に立っているようだ。

少女達はビルを上る。

2階あたりに、上を通っている水道管から水が漏れて、

床のコンクリートに苔がむしていた。

上に行くと、鍵がかかった部屋もいくつかあったが、

あかねが鍵を開けても、誰もいない部屋ばかりで、

生活の痕跡はあちこちに残っていたが、

やっぱり、痕跡は痕跡だった。


「誰もいないのかな」

上まで行ってから、少女達は下に降りてくる。

部屋から仮想空間用のポイントアイテムは取った。

この位かと少女達が降りてきた2階。

先ほどの水道管から漏れた汚い水を、少女が浴びている。

シャツはぴったりと水で張り付き、

目はずっとずっと遠くを見ている。

少女は少女達を見ない。


やがて、少女は親と思われる大人に部屋に連れて行かれてしまった。


彼女は、ずっと遠くの、何を見ていたのか。

少女達はわからなかった。

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