これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
龍の彫られた扉の向こうの世界の物語。
ロンは、いつものようにグループの連中と一緒に夕飯を取る。
そしてロンは告げる。
「話があるから、食事が終わってもちょっと残ってくれるか」
仲間たちの集うロンの家の中では、
食事をするこの部屋が一番広かった。
仲間たちは口々に、わかった旨を伝え、
いつものような夕飯の時間になった。
食事を終え、
皿洗い係が片づけを終える。
そして、仲間は誰一人帰ろうとしない。
ロンは決心を伝えることにした。
「俺は塔に登り、龍鈴を鳴らそうと思う」
仲間たちは、まだ、言葉を待っている。
「…手伝ってほしい」
ロンがそういった瞬間、仲間たちから歓声が上がった。
「あったりまえよ!」
と、叫んだもの。
「ロンに龍鈴ならさせてやろうぜ!」
と、同意を求めるもの。
「ロンが決心してくれたー!」
と、すでに半泣きのもの。
さまざまだったが、
みんな、ロンが龍鈴を鳴らす決心を歓迎してくれた。
「俺たちだけじゃ『白鬼』には力不足だよなぁ…」
「他のグループにも声はかけてみるか?」
「なぁに、協力しないってんなら、俺たちだけでもロンをサポートしてやろうぜ」
「おうよ」
ロンは、気のいい仲間たちに感謝した。
あくる日から仲間たちによる、龍鈴鳴らしの仲間勧誘が行われた。
『白鬼』に不満を持っているものは、少なくない。
表向きは従っていても、
『白鬼』の目と耳の届かないところで、協力を約束したものがいた。
いくつものグループが、ロンが龍鈴を鳴らすことを喜び、サポートを約束した。
『白鬼』の知らないところで、
町の若い者は、がっちりと手を組んでいた。
ロンは部屋からいつもの塔を見る。
(近いうち、龍鈴を鳴らしに行く。そして、この町を『白鬼』から解放する!)
ロンはこぶしを握り締めた。