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第165話 勘

今日も今日とて、ヤジキタ宅急便屋は営業中。

今回はキタザワが探偵事務所に届け物に行くことになった。


キタザワは斜陽街の小さな路地も覚えようとがんばっている。

近道になるならそれに越したことはないからだ。

「ええと…この感じが確かなら…あ、探偵事務所。この路地であってたんだな」

大きな荷物を持ちながら、

キタザワはなんだか、うきうきしながら探偵事務所に向かった。


そこに、敵意の気配。


キタザワは振り向く。

何もない。

斜陽街の街並みがたたずんでいるだけだ。

「ヤジマさんなら、わかるんだろうけどな…」

キタザワはちょっと鈍い自分が嫌になった。


探偵事務所の呼び鈴を鳴らす。

「毎度ありがとうございまーす。ヤジキタ宅急便屋でーす」

探偵事務所の奥から走る足音がする。

そして、探偵の助手が顔を出す。

「あ、宅急便屋さん」

「どうも、ちょっと大きな荷物ですので、俺が運びますね」

キタザワは、よいしょと中に入る。

「ええと、そこのスペース作ってあるところに…」

「はい、そこですね…よいしょっと」

キタザワは荷物を置く。

「ありがとうございます」

「いいえ、これが仕事ですし」

「お茶でも飲んでいきますか?」

「いえいえ、店にヤジマさんを待たせてますし」

帰ろうとするキタザワは、探偵事務所の主が、一言もしゃべらないことに気がついた。

事務所の一角を見ながら、にらんでいる。

「ずっとああなんですよ」

助手はそう言う。

キタザワは、なんだかわかる気がした。

ヤジマさんと同じように、わかる人なんだと感じた。

そうでなくても、斜陽街の探偵さんは勘がいいと聞く。


探偵は、卓上にあったボールペンを投げる。

ボールペンは一直線に部屋の隅に突き刺さり、

バチッと音を立てた。

「嫌な気配の主か…」

探偵が部屋の隅から保護色で隠された機械を取り出す。

「あ、前にヤジマさんが…」

「ああ、あいつもどこかでこいつに気がついたのか?」

「ヤジマさん鋭いですから…」

「だろうな…」

探偵は機械を壊した。


「最近斜陽街で変な気配を感じる」

「そうですね…」

「勘が、嫌な予感を伝えてくる…外れてほしいと思っているよ」

探偵はそう言うと、助手の入れた茶を飲んだ。


キタザワはヤジマを心配し、

店に戻ることにした。

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