これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
紅葉の描かれた扉の向こうの世界の物語。
アキ達一味は、高級レストランの招待券を持って、
車で、町からずいぶん離れたレストランへやってきた。
駐車場には、すでに高級そうなピカピカ磨かれた車が並んでいる。
そして、高級そうな服を着た、
…アキからすれば、なんだかお高くとまった、
階級の高いらしい人物が車を降りていく。
アキ達もそれなりの服を着てきたが、
どうやら、そうそうたる顔ぶれのようだ。
レストランも高級にふさわしく外見から豪華だった。
白く塗られて、繊細な細工がそこかしこに施されている。
アキはそこで、少し小柄な少年を見つけた。
アキも小柄なほうなので、アキよりは背が高い。
少年は高級車の運転手と何か話している。
どうも少年の顔つきから察するに、あまり乗り気でないようだ。
「おい、アキ、行くぞ」
アキの仲間が呼ぶ。
「あたしの招待券だけくれる?すぐ行くから」
仲間は招待券をアキに渡すと、
レストランに入っていった。
「だから、こんなところで食事なんてイヤなんだ」
「坊ちゃん、お父様は忙しい身。ここで人脈を作っておくのも将来の…」
「そういうのがイヤなんだよ。なんだか腹の探りあいとか、だましあいとか、利用価値を見るとか…そういう気がして」
坊ちゃんとやらは、どうもこういう場が好きではないようだ。
アキはちょっと共感した。
「こんにちは。坊ちゃん」
「…なんだよ」
「別に。駄々こねてる坊ちゃんがいると思って」
「駄々というか…正直、苦手なんだ」
「ふぅん、坊ちゃんは高級レストランが嫌い?」
「お高くとまってる気がして…それと、坊ちゃんはやめてくれないかな?」
「じゃあ、なんて呼べばいい?あたしはアキ」
「僕はナツ」
「それじゃナツ、とりあえずは人脈云々より入るだけ入ろう。駄々こねてもおじさん困らせるだけだし」
「ん…すまなかった。じいや」
「いえいえ…では坊ちゃん、行ってらっしゃい」
アキとナツは階級の高いものの集うレストランに入っていった。