これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
龍の彫られた扉の向こうの世界の物語。
ロンのいる町は、白い服を着た者たちに支配されている。
白い服を着たものたちを、『白鬼』と町のものは影で呼んだ。
一般人はある程度普通に暮らしているが、
白い服の者に逆らうと、
かなりひどいことをされた。
白い服の者たちに言わせると、
それがこの町の秩序らしい。
本来は徒党を組むことも、白い服を着たものたちに逆らう行為として、あまり許されていない。
ロン達のグループも、正規のグループではないし、
『白鬼』から見れば、
反乱分子に当たるのかもしれない。
ある日、ロンは町に買出しに出かけた。
メンバーと一緒に、荷物を抱えて帰路につく。
「買い忘れは…ええと…」
メモを見るロンに、
「ロン、あれ…」
メンバーの一人が指をさした。
その先には、『白鬼』に蹴られている子どもがいる。
ロンは荷物をメンバーに渡すと、
子どもの元へ向かった。
「何をしているんですか!」
ロンが大声をあげる。
「俺たちにお前も逆らおうというのか?」
「子どもが何を逆らったというのです!」
「白の服を汚した!それだけで十分死に値する行為だ!」
「それがあなた方の秩序なのですか!」
「だまれ!お前も秩序を乱そうというのか!」
「汚れた服は洗えば落ちる。それすらしないのが秩序を乱すのではないですか?」
「ちっ…」
『白鬼』の一人は、ロンにつばを吐いて去っていった。
蹴られていた子どもが恐る恐る顔を上げる。
ロンは吐かれたつばを拭き、
「もう大丈夫だよ」
と、笑って見せた。
ロンはメンバーとともに家に戻り、
汚れた服を洗う。
「この町の秩序…」
ロンは考え込む。
今の秩序というものに疑問を持つことができるなら。
それを変える伝説があるというのなら。
ロンは部屋の窓の外を見る。
伝説の龍鈴のある塔。
その鈴を鳴らせば、『白鬼』から解放されるだろうか。
帰りに見た子どもも、
きっと他にもいる苦しむものも。
ロンは龍鈴を鳴らそうと、心に決めた。