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第155話 監視

(嫌な気配だ…)

ヤジマはそう思った。


今回の届け物は、斜陽街から斜陽街へ。

少し重いものだから、キタザワも一緒に運んでいる。

まぁ、それが仕事といえば仕事だ。

それでも、何かを見張っているような…気配というか視線というか…

以前強盗をしていたヤジマだから…もう、足は洗ったが…

以前が以前だっただけに、この手の監視はかなり気になる。


「どうしました?」

届け先の花術師のおばあさんに尋ねられる。

「嫌な気配がするんですよ」

ヤジマがそう答えれば、

「気配ですか?」

と、花術師のおばあさんが聞き返す。

「監視されているみたいです」

「まぁこわいこと」

おばあさんがそう言うと、

奥からキタザワが出てきた。

「花術師さん、ヤジマさん、運び終わりました」

と、やってくるキタザワに、

「伏せろ!」

と、ヤジマは怒鳴る。

条件反射で伏せるキタザワ、

ヤジマはすばやく銃を抜き、花術師のお店の一角を撃った。


硝煙のにおいがする。

キタザワはおっかなびっくりに身体を起こす。

「何が…」

「これだよ」

ヤジマは店内の一角から、花術師の店内にそぐわない機械の塊を拾い上げた。

「気配の正体の一つだ…斜陽街中にもっとあるかもしれないな」

「一体誰が何のために…」

「知れば苦労しないよ…あ、花術師さん、びっくりさせてすみません」

「いえいえ…ありがとう」

ヤジマとキタザワは花術師の店をあとにした。


帰りがてらヤジマが話す。

「視線の感じもするし…斜陽街に監視カメラがついたと思って間違いないだろうな」

「斜陽街なんか監視して…」

「何の得があるかはわからない。以前いたところでは、こんな技術はなかったし…」

「扉屋の向こうはいっぱいですから…そこから?」

「おそらくはな。前科者はこういうときに弱いよな」

ヤジマが乾いた笑いをする。

そんなヤジマにキタザワは、

「前科があっても…斜陽街は守れませんか?」

と、真面目に言ってみる。

ヤジマは一瞬きょとんとするが、

「それもそうだな」

と、笑った。


嫌な気配は消えないけれど、

斜陽街を守れるだけ守ろうとヤジマは決めた。

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