ここは斜陽街三番街の、がらくた横丁。
横丁の中に、玩具屋がある。
おもちゃを売ったり修理したり。
暇な時間はおもちゃを作ったり。
玩具屋はそういったことをしている。
今日も今日とて、
玩具屋は模型を一つこしらえていた。
手先の器用な玩具屋は、
それでも慎重に、模型を作っている。
白い、きれいな船の模型だ。
実在する船かどうかはわからない。
けれど、かなりリアルで、
小人でもいたら、ちゃんと船になりそうな感じであった。
玩具屋が模型作りをしていると、
お客が来た。
子どもが二人。
車のおもちゃが壊れたらしい。
玩具屋は模型を作る手を止め、
おもちゃ修理に取り掛かった。
子ども二人が模型に興味を持つ。
玩具屋は何も言わない。
子どもが模型に手を伸ばし、いじろうとしたところ、
模型は台から落ちて壊れてしまった。
子どもは玩具屋から黙って出て行ってしまった。
玩具屋はそれを全部把握していた。
また、作り直せばいいかと思っていた。
だから、
「ほら、車直ったよ」
と、外にいる子どもに呼びかけた。
子どもが恐る恐る出てくる。
「怒ってない?」
「怒っていないよ。作り直せばいいものだからね」
「…ごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
子どもは謝った。
玩具屋はそんな子どもの頭をなでた。
子ども二人が去っていって、
玩具屋は壊れた模型の修理に取り掛かった。
実はこの模型、他の子どもに壊されたこともある。
一度や二度ではない。
この模型は何度でもよみがえる。
そういうものだと思っている。
玩具屋は、また、模型作りに励むことになった。
壊れたら直せばいい。
完成がないならそれでもいい。
何度でもこの船は復活する。
白いきれいな船は、
しばらくしたら、また、玩具屋の手によってよみがえるだろう。