これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
紅葉の描かれた扉の向こうの世界の物語。
ここはとある町。
上流階級と、悪党が大手を振る町。
その町に住まうアキは、いわゆる悪党と呼ばれるものだった。
アキは一見すればそれなりの生活をしているように見える。
しかし実は、アキは他に3人の仲間と、主に泥棒を働いている。
美術品や宝石など、高価なものを狙う。
そして、その盗品は、
上流階級が買い取る。
そんなシステムが出来上がっていた。
アキとしては疑問に思うところはある。
何を持って正義か。
何が正しいのか。
正しくないことをしてまで金を得るのは…
こんな自分が裁かれないのは…
考え出すとぐるぐるとしてしまう。
そして、アキなりの罪滅ぼしに、
孤児院にお金を入れることがある。
美術品などを売りつけたあとの、
アキの分の分け前から少しずつ。
仲間には黙っている。
そんなある日、
アキたちの元に招待状が来た。
「なに?」
「上流階級限定の高級レストランができたので、それのご招待…だとさ」
「高いんじゃないか?」
「招待券があれば、無料だと」
「行くしかないじゃないか」
仲間が行くことを、ほぼ決定する。
「アキはどうする?」
「…なんか、高級なの、肌に合わないんだけど…」
「どうせタダなんだし、行こうぜ」
「…わかった」
アキは気が進まなかった。
嫌な予感も感じていたからだ。
裏がある感じ。
悪党として生きていく上で身につけた勘。
でも、根拠はなく、
アキはレストランに招待されることとなった。
それでも、アキは勘に従い、護身用に持ち歩く伸縮するロッドを懐に入れた。
「レストランはどこなの?」
アキが尋ねれば、
仲間は同封されていた地図を示した。
ずいぶん町から離れている。
自然の中で高級感を、と、書いてあったが、
やはりアキは嫌な予感がした。