目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第147話 無法

これは斜陽街でない、

どこかの都市の話。


ここは、秩序と法を重んじる都市だ。

建物は規則的に、白で統一されている。

住まう住民も、

同じ服、同じ靴。

白で統一されている。

個性を重んじることは、

結果的に犯罪につながるとして、

白に溶け込む無個性を重んじた。


その都市のとある建物に、

白い制服の男が入っていった。

「667、入ります」

男はそう宣言した。

男に名前はない。

667とは、男を識別するための数字だ。


「667、許可します」

電子音声がそう言うと、扉が開いた。

667は扉から、会議室を目指した。

会議室には、何人かの白い制服の者たちが集まっていた。

667はいつもの席に座った。


この会議室では、

無法な町を秩序ある正しい町にする会議をしている。

この都市は成功例とされ、

秩序と法の恩恵を受け、平和だ。

秩序と法を、他の町にも広め、

やがて世界という世界が、秩序に守られる。

そういうことを目指していた。


「426が新しい無法な町を見つけてきた」

スクリーンに雑多な町が映し出される。

「ひどい曖昧さだ」

「こんな町に人はいるのか」

「人間の住まう場所ではない」

さまざまの感想が飛び交う。

「静かに。確かにこの町はひどい。それは私も同感だ」

「ではどうするのですか?」

「監視をしたほうがいいのでは?これ以上無法になる前に」

「754、そうしよう」

「監視の時点で問題があった場合、戦士が総力を挙げて無法の町を制圧し、秩序をもたらす」

「それがいい。今までそうしてきた」


「この町の名は斜陽街というそうだ」


「名などどうでもいい。要は無法な町だ」

「そう、こんな町を放置してはいられない」

「この町を『D69』と、識別する」

「異議なし」


会議は、そうして終わる。

こうして、斜陽街…『D69』はこの都市から監視対象となった。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?