これは斜陽街でない、
どこかの都市の話。
ここは、秩序と法を重んじる都市だ。
建物は規則的に、白で統一されている。
住まう住民も、
同じ服、同じ靴。
白で統一されている。
個性を重んじることは、
結果的に犯罪につながるとして、
白に溶け込む無個性を重んじた。
その都市のとある建物に、
白い制服の男が入っていった。
「667、入ります」
男はそう宣言した。
男に名前はない。
667とは、男を識別するための数字だ。
「667、許可します」
電子音声がそう言うと、扉が開いた。
667は扉から、会議室を目指した。
会議室には、何人かの白い制服の者たちが集まっていた。
667はいつもの席に座った。
この会議室では、
無法な町を秩序ある正しい町にする会議をしている。
この都市は成功例とされ、
秩序と法の恩恵を受け、平和だ。
秩序と法を、他の町にも広め、
やがて世界という世界が、秩序に守られる。
そういうことを目指していた。
「426が新しい無法な町を見つけてきた」
スクリーンに雑多な町が映し出される。
「ひどい曖昧さだ」
「こんな町に人はいるのか」
「人間の住まう場所ではない」
さまざまの感想が飛び交う。
「静かに。確かにこの町はひどい。それは私も同感だ」
「ではどうするのですか?」
「監視をしたほうがいいのでは?これ以上無法になる前に」
「754、そうしよう」
「監視の時点で問題があった場合、戦士が総力を挙げて無法の町を制圧し、秩序をもたらす」
「それがいい。今までそうしてきた」
「この町の名は斜陽街というそうだ」
「名などどうでもいい。要は無法な町だ」
「そう、こんな町を放置してはいられない」
「この町を『D69』と、識別する」
「異議なし」
会議は、そうして終わる。
こうして、斜陽街…『D69』はこの都市から監視対象となった。