これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
龍の彫られた扉の向こうの世界の物語。
ある町に、ロンという男がいた。
年の頃25。
ロンは、町のとあるグループのリーダーだ。
ロンより年上もいる。
ロンより年下もいる。
女も子どももいる。
けれど、あまり年配者はいない。
若いグループだ。
その町には、伝説がある。
町に高い塔が立っている。
その塔の一番上には、龍鈴というものがあるという。
その龍鈴を鳴らすと、
新たなる町の支配者になれると。
そんな伝説だ。
今は封鎖されていて、
塔に入ることはできない。
この町を支配するものが、
支配権をとられるのが嫌なのか、
…まぁ、伝説は伝説、と、ロンは頭を振った。
ロンが考え事をしていると、
グループのメンバーが、飯ができたとロンの部屋に来た。
「今行く」
と、ロンは返し、
メンバーも出て行った。
ロンは塔を見る。
高い高い塔は、
なるほど、天に昇ろうとする龍に見立てたのだろうと思った。
「ロン、また、塔を眺めてたの?」
話しかけてきたメンバーに、
「まぁな」
と、ロンは苦笑いする。
「ロンなら新しい町のリーダーにふさわしいと思うのに」
「俺はそんな柄じゃないよ」
ロンは粥をすすりながら、やっぱり苦笑いする。
「ロン」
「なんだ?」
「もし、俺たち全員がサポートして、塔に登らせると言ったらどうする?」
「俺はそうまでされるものでもないさ。それに、このグループが一番好きだし、俺は多くは望まん」
「変なリーダーだな。相変わらず」
メンバーは笑った。
ロンも笑った。
部屋に戻ってきたロンは、
窓から塔を見る。
天に昇ろうとする龍が、
がんじがらめになっているような気がした。
龍鈴を鳴らせば、がんじがらめから解放されるだろうか。
そんなことを考えたが、
「俺は町のリーダーの柄じゃない。せいぜいグループのリーダーどまりだ」
そう思ったが、
がんじがらめの龍のイメージは、払拭されなかった。
ロンはまた、部屋で物思いにふけるのだった。