「悪くない銃だな」
ヤジマは重い銃を手に取り、構えた。
「ふむ」
ヤジマは納得すると、
「これ、もらうよ」
そういい、その町の銃器売りから銃を買った。
ヤジマが扉を通って、斜陽街に戻ってくる。
ヤジマとキタザワは、
斜陽街で宅急便屋をしている。
ヤジキタ宅急便屋だ。
扉屋の扉から、他の町に行くことも多い。
物騒な町もないわけではない。
ヤジマは扉の向こうの町に荷物を届ける際、
護身用にと銃を買ったのだ。
気の強いヤジマでも、一応女だ。
以前宝石強盗をしていたヤジマだが、
そのときと似たような銃になるのは、
ヤジマの好みかもしれない。
ヤジマが一番街に戻ってくる。
ヤジキタ宅急便屋の店がある通りだ。
キタザワが一人で店番をしている。
依頼はないのか、
平和そうにあくびをしている。
「おいっ」
「あ、ヤジマさん。お疲れ様です」
「暇なら店を整える位したらどうだ?」
「整えるって言ったって…」
あちこち整頓された店、掃除も行き届いている。
キタザワの性格なのだろう。
キタザワが、ヤジマの銃に気がついた。
「あ…」
「ん?こいつか?」
ヤジマは銃を抜く。
「届け先が物騒なこともあるからな。一応護身用だ」
「でも、ヤジマさんにしては大きくないですか?以前だって…」
「過去の話はやめようや。斜陽街は平和なんだしな」
「そうですね、平和、ですよね」
かざりっけがなくて、大きくて、
そういう銃が好みになったのはいつからだろう。
ヤジマはある意味、
宝石より、銃を持つほうが好きだ。
重みがたまらない。
撃つ瞬間の衝撃がたまらない。
…まぁ、斜陽街で撃つことなんかないだろうけど。
「俺も何か護身用に持った方がいいですかね」
キタザワがぼやけば、
「でかい図体して、護身用だ?腰抜け」
ヤジマに言われ、キタザワがしょぼんとする。
「お前は、力があるんだからいいだろ」
ヤジマが笑えば、キタザワもつられて笑った。
かざりっけのない笑いだった。