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第145話 銃

「悪くない銃だな」

ヤジマは重い銃を手に取り、構えた。

「ふむ」

ヤジマは納得すると、

「これ、もらうよ」

そういい、その町の銃器売りから銃を買った。


ヤジマが扉を通って、斜陽街に戻ってくる。


ヤジマとキタザワは、

斜陽街で宅急便屋をしている。

ヤジキタ宅急便屋だ。

扉屋の扉から、他の町に行くことも多い。

物騒な町もないわけではない。


ヤジマは扉の向こうの町に荷物を届ける際、

護身用にと銃を買ったのだ。

気の強いヤジマでも、一応女だ。

以前宝石強盗をしていたヤジマだが、

そのときと似たような銃になるのは、

ヤジマの好みかもしれない。


ヤジマが一番街に戻ってくる。

ヤジキタ宅急便屋の店がある通りだ。

キタザワが一人で店番をしている。

依頼はないのか、

平和そうにあくびをしている。


「おいっ」

「あ、ヤジマさん。お疲れ様です」

「暇なら店を整える位したらどうだ?」

「整えるって言ったって…」

あちこち整頓された店、掃除も行き届いている。

キタザワの性格なのだろう。


キタザワが、ヤジマの銃に気がついた。

「あ…」

「ん?こいつか?」

ヤジマは銃を抜く。

「届け先が物騒なこともあるからな。一応護身用だ」

「でも、ヤジマさんにしては大きくないですか?以前だって…」

「過去の話はやめようや。斜陽街は平和なんだしな」

「そうですね、平和、ですよね」


かざりっけがなくて、大きくて、

そういう銃が好みになったのはいつからだろう。

ヤジマはある意味、

宝石より、銃を持つほうが好きだ。

重みがたまらない。

撃つ瞬間の衝撃がたまらない。

…まぁ、斜陽街で撃つことなんかないだろうけど。


「俺も何か護身用に持った方がいいですかね」

キタザワがぼやけば、

「でかい図体して、護身用だ?腰抜け」

ヤジマに言われ、キタザワがしょぼんとする。

「お前は、力があるんだからいいだろ」

ヤジマが笑えば、キタザワもつられて笑った。


かざりっけのない笑いだった。

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