これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
鈍い色の扉の向こうの世界の物語。
そこは、人間の身体が機械でできているのが当たり前だった。
生身では力がなさ過ぎる、と、
生身を捨てて機械にするのも当たり前だった。
機械の身体。
精密な機械で人間と見分けはつきにくくなったが、
それでも血は通っていなかった。
その世界、その町でのある日のこと。
「わざわざ機械体にして、やることが強盗たぁ…せこいというかなんと言うか」
「人質が目的みたい。何かわめいてる。音声回して」
小さな店を取り囲むようにして、警察の車。
その車の群れの中、やはり警察が多数。
強盗されたという店に向かって銃を構えている。
音声を回してといった女が、手首にコードをつないだ。
見た目は人間でも、機械の身体だ。
女はしばらく音声に集中をし、
やがてコードを抜いた。
相棒らしい大柄の男が話しかける。
「何か?」
「高精度の機械体をよこせですって。店員は生身だから、撃てるもんなら撃ってみろ…」
「たちの悪いジョークですね」
「あんなのが高精度の持ったところで…メンテナンス忘れて壊れるのがオチよ」
女は銃を取り出す。
「視界を準備して。飛ばさないように撃つわ」
連絡を取り、手首にコードをつなぐ。
相変わらず店では強盗がわめいている。
女の目がデジタル処理に変わる。
男の行動パターンや、熱処理、その他のギミックのあるなしを探す。
オールクリアになったところで、
女の機械体が高速で銃の照準合わせの処理をする。
ここまで物の数秒もかかってはいない。
女が銃を撃った。
店のガラスを破り、
気がついたときには男は、
機械神経の集まった、脊髄の一部を打ち抜かれていた。
店員に怪我はない。
「脳は生きてるはずよ。念のためにウイルスチェックしてから調べて」
女と相棒は、機械体などの犯罪の取締りをしている。
ここはそんな世界だ。