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第143話 機械体

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

鈍い色の扉の向こうの世界の物語。


そこは、人間の身体が機械でできているのが当たり前だった。

生身では力がなさ過ぎる、と、

生身を捨てて機械にするのも当たり前だった。

機械の身体。

精密な機械で人間と見分けはつきにくくなったが、

それでも血は通っていなかった。


その世界、その町でのある日のこと。


「わざわざ機械体にして、やることが強盗たぁ…せこいというかなんと言うか」

「人質が目的みたい。何かわめいてる。音声回して」

小さな店を取り囲むようにして、警察の車。

その車の群れの中、やはり警察が多数。

強盗されたという店に向かって銃を構えている。

音声を回してといった女が、手首にコードをつないだ。

見た目は人間でも、機械の身体だ。


女はしばらく音声に集中をし、

やがてコードを抜いた。

相棒らしい大柄の男が話しかける。

「何か?」

「高精度の機械体をよこせですって。店員は生身だから、撃てるもんなら撃ってみろ…」

「たちの悪いジョークですね」

「あんなのが高精度の持ったところで…メンテナンス忘れて壊れるのがオチよ」

女は銃を取り出す。

「視界を準備して。飛ばさないように撃つわ」

連絡を取り、手首にコードをつなぐ。


相変わらず店では強盗がわめいている。

女の目がデジタル処理に変わる。

男の行動パターンや、熱処理、その他のギミックのあるなしを探す。

オールクリアになったところで、

女の機械体が高速で銃の照準合わせの処理をする。

ここまで物の数秒もかかってはいない。


女が銃を撃った。

店のガラスを破り、

気がついたときには男は、

機械神経の集まった、脊髄の一部を打ち抜かれていた。

店員に怪我はない。


「脳は生きてるはずよ。念のためにウイルスチェックしてから調べて」


女と相棒は、機械体などの犯罪の取締りをしている。

ここはそんな世界だ。

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