電脳娘々は、夜羽のテープで捕獲した邪気を、
電脳中心まで連れて行き、
そして、電脳中心にある、電脳娘々の数々の機材によって、
邪気は無事にCD-Rに書き込まれた。
一応悪さができないように、圧縮してある。
「やれやれ…これで斜陽街も平和になるね」
思えばこの邪気であちこち騒ぎが起きた。
人形師の人形にとりついたり、
熱屋の熱カプセルにとりついたり、
がらくた横丁を逃げ回ったり…
電脳娘々が把握していないものなら、もっとになるだろう。
「とにかく、これをシャンジャーに送ろう」
この邪気もデータを取られれば、抹消される運命だ。
ぜんぜん命ではないのだが、
迷惑をかけることしかできないプログラムみたいなものなのだが、
電脳娘々は、一抹の寂しさを感じた。
それでも、電脳娘々はシャンジャーに連絡を取る。
いつもの場所にアクセスする。
「シャンジャー?」
『ああ、俺だ』
「邪気、捕まえておいたよ。今データ送るね。念のため圧縮してあるから。例のソフトで解凍してね」
『ああ、ありがとう』
「シャンジャー?」
『ん?』
「疲れてる?」
『ああ…その邪気のコピーを、こっちでずいぶん削除してたからな…電脳空間だと、そいつコピーするんだ…』
他愛もない会話をし、
電脳娘々はシャンジャーとの連絡を終えた。
邪気のデータは送った。
電脳娘々は、この邪気を、
ちょっとした記念に取っておこうかと思った。
無論、悪用する予定はないが、
まぁ、気が向いただけだ。
電脳娘々は邪気のCD-Rをケースに入れ、
「邪気」と、記すと、
電脳中心の中の、CDケースにしまう。
正直、疲れはしている。
電脳空間でコピーをされるというなら、
シャンジャーはもっと疲れているかもしれない。
「明日は筋肉痛かな…」
電脳娘々は、普段滅多に運動らしい運動はしない。
それでもそれなりにバランスのいい女性なのだが。
それでも、今回の騒動は結構きたらしい。
筋肉痛も、斜陽街に生きている証と思えば。
電脳娘々はそう思い、
休むことにした。
「おやすみ、いたずらっこさん」
CDケースに向かってそう言うと、
電脳娘々は電脳中心の奥に消えた。