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第134話 海

合成屋のもとに、

花術師から、種が渡されてしばらくした。

そろそろ試してもいいかな、と、合成屋は思った。

しかし、何と合成させるか、

それが今まで問題だったが、

合成屋の義手を通してであるが、

種に触れたときに感じたイメージを、もとにして合成することにした。


合成屋が感じたのは、

海。

種の中に海を感じた。


そして、合成屋はそのイメージを導くものを、しばらく探していた。

水は賢者の井戸にある。

ならばと合成屋が思いついたのは、

音屋で海の音をもらうことだった。


とりあえずカセットテープに海の音をもらい、

合成屋はこの日を迎えた。


賢者の井戸に、

花の種と、海の音を投げ込む。

そして、もにゃもにゃと呪文を唱え…えいっ!と、賢者の井戸を蹴飛ばす。


そして、賢者の井戸から合成されたものが飛び出す。

飛び出してきたのは…花だ。

小さな無数の花が、

根っこごと、一株出てきた。


合成屋は花を鉢に植える。

作業を終えると、

無数の花々の、花の中心は、水がたまっていることに気がつく。

そして、それぞれから音がするような気がする。

合成屋は店の奥から虫眼鏡を取り出し、

花を覗き込む。

仮面には目の穴は開いていない。

けれども合成屋は虫眼鏡をのぞきこむ。


ある一つの花の中心は瓦礫の町に朝の来た海だった。

ある一つの花の中心は断崖絶壁の海だった。

ある一つの花の中心は穏やかな凪の海だった。

花の中心にある水が、レンズのようになって、

海という海を映し出している。

そんな花が無数にあった。


「なるほど海らしいなぁ」


合成屋はこの花に『海の花』と名付けると、

花術師に見せに、花を持って出て行った。


「花術師さん、びっくりするかなぁ」

合成屋の足取りは弾んでいた。

もっとも、表情は相変わらず仮面でわからないけれども。

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