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第133話 青

空飛ぶ魚のシキと、異邦人のクウは、

斜陽街の番外地を歩いていた。

一番街のバーのマスターから、

番外地に店を出した砂屋なら、

色とりどりの砂が集まっているはず…と、聞いて、

シキとクウは番外地を歩いていた。

別段急がず、

いつものように。


路地を寄り道しながら、

シキとクウは砂屋にやってきた。

クウが入り口を開けると、

あまり広くない店内に、

なるほど、色とりどりの砂がそろっていた。


「いらっしゃい」

店の奥から砂屋の店主が顔を出す。

「砂が要るのかい?」

編み笠をかぶった店主は、たずねる。

「いや、俺は色を探しているんだ。気に入った色を俺につけるんだ」

「なるほど色をね」

砂屋の主人は、しゃべって空を飛ぶ魚や、色が欲しいという突拍子もないことに驚かない。

斜陽街にすっかり馴染んでいる。


「そいじゃ、店の砂をちょっと見せてもらっていいかな」

「おお、どうぞ」

シキはふよふよと砂屋の店内を飛ぶ。

「ふむふむ…」

と、色とりどりの砂を物色する。

クウが何かに気がつき、

飛んでいるシキをわしっと捕まえた。

「ぶわっ!」

驚いているシキをよそに、クウはある砂のところまで引っ張っていく。

そして、少ないけれど、

きれいな青い砂を指差す。


「こりゃ…宝石の砂か?」

シキが驚いたように砂に見入る。

「お目が高いね。それは宝石が要らなくなった人から譲り受けて砂にしたものでね」

「よし!砂屋さん、この色をもらってもいいか?」

「元値はないしね。色でも何でも持って行っていいよ」


宝石の青い砂から、シキに、

色がゆるゆると移る。

シキに青が追加された。


シキがクウの方に振り返る。

「さぁて、クウ…わっ!」

シキが言う前に、

クウはシキをぎゅっとした。


何か遠くに、いいものがあるのを感じる。

そこまで行けば手に入るような。

手に入れたいと思った。

でも、遠いなとも感じた。


「クウ…それは、あこがれってやつだ」

クウは頷いた。


シキとクウは、

また、斜陽街を歩きに行った。


「お前とどこまで歩けるかな…」

シキがポツリとつぶやいた。

クウはその意味がわからなかったけれど、

シキとなら一緒でもいいなと感じていた。

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