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第132話 煙草

扉屋の瓦礫撤去作業を終えた探偵は、

ぶらぶらと番外地を歩いていた。

適当なところで、

ふと思い当たり、

胸ポケットから煙草を取り出す。

そして、マッチで火をつける。


煙を吸い込み、

ふぅ…と、煙草を味わう。


番外地の路地の壁にもたれかかり、

探偵は煙草を吸った。

すると、

「おや、珍しい蛍かと思いました」

と、飄々とした声がする。

タキシードに身を包んだ、螺子ドロボウだ。

探偵のような、薄汚れたコートではない。

螺子ドロボウは、いつもきりっと正装している。


「俺の螺子でも盗みに来たか?」

探偵がくわえ煙草で話せば、

「いいえ、珍しい蛍の仲間になろうと思いまして」

螺子ドロボウはポケットから上等そうな煙草を取り出す。

「マッチまだあります?」

「ライターくらい持ってないのか?」

「マッチの火の方が好きなんです」

探偵は螺子ドロボウの煙草にマッチで火をつける。

螺子ドロボウがうまそうに煙草を吸う。


螺子ドロボウが、何か思いついたように話し出す。

「そういえば…」

「何だ?」

「斜陽街じゃないところでは、探偵とドロボウって、追いかけっこするみたいですよ」

「お前相手にか?疲れるだけだ」

探偵はそう言い、短くなった煙草を、

助手に持たされている携帯灰皿に入れ、

もう一本煙草に火をつけた。

その一連の仕草を螺子ドロボウは見ていて、

「そうですね、追いかけられるのなら、やっぱり螺子師のほうがスリルがありますね」

「その前に追いかけられるようなことをしなけりゃいいだろ…」

「螺子ドロボウは、やめられませんよ」

と、螺子ドロボウはくわえ煙草で笑った。


探偵は煙草を、また、携帯灰皿に入れる。

ついでにと、螺子ドロボウの煙草も携帯灰皿で消す。

「これからどうするんだ?」

探偵は螺子ドロボウになんとなく問いかける。

「さぁ?」

と、螺子ドロボウは笑うと、

斜陽街の路地に消えていった。


探偵は、事務所に戻ってちょっと眠るかと思っていた。

これ以上仕事があるとは思えなかった。

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