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第128話 帯

電脳娘々は、邪気を追っていた。

相変わらず、邪気の逃げ足は速い。

これ以上斜陽街で騒ぎを起こされると困る。

そう思っていた。


邪気は番外地の一角のほうに逃げていった。

鳥篭屋や扉屋がある方だ。

路地を邪気が曲がっていった。

電脳娘々もそのあとを追う。


一方、

鳥篭屋から出てきた夜羽は、

黒い不定形のものが、すごい速さで駆けて来るのを見た。

そして、電脳娘々が追いかけているらしいこともわかった。

夜羽は鞄から空テープを取り出す。

妄想も何も入っていないテープだ。

そして、黒い不定形のものが夜羽に近づいてきたところで、

夜羽はフィルムテープをしゅるっと指で取り出す。

そして、テープで黒い不定形を雁字搦めにしてしまう。

黒い不定形は、もがくが、

夜羽のテープが絡み付いて動けない。


やがて、電脳娘々が息を切らして夜羽のもとにやってくる。

「あー…捕まえてくれたの?」

「なんだか、悪そうなものだったから、一応」

「それ、邪気なんだって」

「なるほど悪そうだ」

夜羽はテープの帯で動けなくなっている邪気を見た。


「一応動けなくしたけど、ちゃんと捕まえておいたほうがいいと思うよ」

「ん、それじゃCD-Rにでも焼いておくわ」

「容量足りるんですか?」

「少なくとも、カセットテープの帯よりはたくさん情報が入るわよ」

「そんなものですか」

「夜羽もカセットテープからCDにしたら?」

電脳娘々が笑いながら言えば、

「僕はカセットテープが好きなんです」

と、夜羽はちょっと憮然としたようだ。


「ところで、バーのオプションのような夜羽が何でこんなところに?」

電脳娘々がたずねる。

「斜陽街にちょっと迷い込んだ少年に、鳥篭をお土産に持たせようと思いまして」

「ふぅん…自分の妄想テープと言い出さないだけ、趣味いいわね」

「…それ、どういう意味ですか?」

「まぁいいわ。とりあえず邪気はもう動けないのよね」

「ええ、テープごと持って行きます?」

「ん、もらってくわ」


夜羽は邪気を電脳娘々に引き渡すと、

ふらりと扉屋に向かっていった。


「さ、きりきりついてくる!」

電脳娘々は、帯で雁字搦めになった邪気を、

電脳中心まで連行して行った。

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