ヤジマとキタザワは、
強盗して奪った宝石を処分しようと斜陽街を歩いた。
歩くだけでは、とんと見当もつかないので、
キタザワが、道行く人に声をかけた。
すると、
「宝石?鉱物の処理なら、番外地の砂屋がいいんじゃないか?」
「砂屋、ですか?」
キタザワが聞き返す。
「そう、砂屋だ。色とりどりの砂が欲しいって言ってたから、そこで処分してもらったらいいんじゃないか?」
キタザワは番外地の砂屋の場所を聞き、
ヤジマとともに砂屋に向かった。
砂屋に向かうまでの間、
キタザワがヤジマに話しかける。
「ヤジマさん…」
「なんだ?」
「どうして処分しようと思ったんですか?」
ヤジマは奪った宝石の詰まった鞄を見る。
「もう、こいつらに未練がないからな」
「せっかく手に入れたのに、ですか?」
「せっかくと言うか…ん、いらないんだ。もう」
「どうして…」
ヤジマは少し考えた。
「元の街に戻る気がなくなった感じかな…うまく言えないけどな」
ヤジマは少し笑った。
「ヤジマさんが戻らないなら、俺も戻りません」
「そうか…」
「あ、ここじゃないですか?砂屋って」
二人は砂屋についた。
そして、宝石のいっぱい詰まった鞄を砂屋の主人に渡す。
「砂にしてくれるのか?」
「ああ…だけど、こんなにもらっていいのか?この青いのなんかこんなに大きいのに…」
「いいんだ。全部まとめて砂にしてくれ」
ヤジマがきっぱりと言い放つ。
砂屋の主人はヤジマの決意を見たようだ。
「じゃ、砂にする。けれど、宝石ごとに別々にしておくからな。思い出したくなったら、ここに来てくれ」
そして、砂屋は砂屋の技術で、宝石をさらさらと砂にしていった。
ヤジマとキタザワは砂屋をあとにした。
鞄は空っぽだ。
「これからどうします?」
キタザワが聞けば、
「さぁな、今考えてるところだ」
ヤジマは笑いながら言った。
宝石に未練はこれっぽっちもないようだった。