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第123話 緑

少し色のついた魚のシキと、異邦人のクウは斜陽街を歩いていた。

ふらふらと歩いて、

そして、斜陽街の一番街に出たらしい。

シキはあたりを見回していたが、

「あ!」

と、声を上げた。

「バーがある。カクテルっていい色しているんだよな。行くぞ、クウ」

クウは頷き、シキについていった。


バーの入り口のドアを開くと、

来客を知らせるベルが、カランコロンと鳴る。

「いらっしゃいませ」

と、カウンターの男が挨拶する。

「あ、ども」

と、シキが返し、

クウもおじぎをする。

シキはまた、あたりをきょろきょろする。

そして、

「ほかに従業員らしいのもいないな。あんたの店か?」

と、たずねる。

「まぁ…ここのマスターといったところです」

と、バーのマスターは返した。


「まぁいいや、何かきれいな色のカクテルもらえないか?」

と、シキが言えば、

「お見受けしたところお魚のようですが…飲めるのですか?」

「普通そう思うよなぁ…俺もそう思ってた」

と、シキは照れたように言った。

「俺は、色が欲しいからな…何かいい色をと思ったんだけど…ちょっと、カウンターの中を飛ばせてもらっていいか?」

「どうぞ」

と、言われると、

シキはふよふよとカウンターの中を飛び、

リキュールなどの瓶を物色する。

「どれもがそうのようで違うような…あ!」

「何でしょう?」

「マスター!これ!この緑色のおもちゃ!」

シキが示したのは、玩具屋で修理してもらった緑色のおもちゃだ。

「それは…」

と、マスターが渋る。

「いや、色をもらうだけでいいんだ。だめか…?」

マスターはふっと笑うと、

「色だけでしたら」

と、答えた。


おもちゃからシキにゆるゆると色が移る。

シキに緑色が追加された。


「それ、大事にしてやれよ」

と、シキは言い、

クウに向き直る。

「さ、いつもの儀式だ。触れよ」

クウは頷き、シキに触る。


伝わってくる、

自分にとても近い人たち。

その人たちを大事だと思う…これは、気持ち。

「クウ、近い人を感じてるだろ?」

クウは頷く。

「それは家族ってやつだ。家族を大事にしたい気持ちが伝わっているはずだ」

クウは頷いた。


そして、シキとクウは、バーをあとにした。

「俺には家族はいないけれど色がある。お前にも何かが加わっていく」

シキが呟く。

「あるいは、いずれ、家族もな」

シキは誰に対してでもなく、呟いた。

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