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第122話 詩

番外地の廃ビル。

そこの一部屋に、時計に囲まれた詩人がいる。

詩人は、どういうわけか時計に急かされながら詩を書くのが日課だが、

今に限っては詩を書いていなかった。


詩人は時計に囲まれている。

コチコチカチカチと。

それはいつもと一緒だが、

詩人は、どこかからか持ってきた、小さなテレビを見ている。

ご丁寧にビデオデッキもある。

どうやらどこかからか電源を取っているらしいが…

詩人はテレビに見入っていた。


映し出されるのは、

ホラー映画。


これは、詩人が気分転換にと、

二番街のレンタルビデオ屋で借りてきたものだ。

レンタルビデオ屋は、

彼が詩人であることを知ると、

「じゃあ、いつまで借りててもいいですから、ビデオ見て感じたことを詩にしてくれませんか?」

と、言った。


そして、詩人はビデオを見ている。

コチコチカチカチと時計に急かされながら、

レンタルビデオ屋はいつまで借りていてもいいと言ったが、

詩人自身が急かされている。

…まぁ、詩人が急かされているのは、いつものことだが。


そして、絶叫や、恐怖の引きつり顔や、重苦しい沈黙などが並んだビデオが終わり、

詩人は早速詩を書きにかかった。


「黒い快感と不快、解放の快感と恐怖の不快…その濁流は混濁し、暴れた流れとなり、最後に放心を残す…」

詩人はここまで書き、

なんだか違うという風に考え込んだ。


コチコチカチカチ。


「黒い快感と不快…」

詩人はどうしてもそこから離れられないらしい。

そして、詩人は時計に急かされ悩みながら、

どうにかこうにか詩を書き上げたらしい。


ビデオを取り出すと、

一つの詩と、ビデオを持って、

時計の部屋をあとにした。


詩人が気分転換になったか、

それは詩人にもわかっていないと思う。

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