合成屋は、暇つぶしにいろんな物を合成する実験をし始めた。
分離は無理らしいから、
とりあえず合成というわけらしい。
ある日。
合成屋は、熱屋から熱カプセルを一つもらってきた。
そして、使い捨てカイロ…の、使い切って冷え切ったものをどこかから調達してきた。
「実験♪実験♪」
ひととおり楽しげに踊った後、
合成屋はいつもの儀式を始める。
合成する熱カプセルとカイロを『賢者の井戸』に放り込み、
もにゃもにゃと呪文を唱える。
そして、井戸を蹴飛ばす。
そして、合成された物が出てくる。
合成屋は、また温かくなったカイロを期待していた。
そして、合成された…カイロが飛び出す。
「おっとっと」
と、合成屋は危なっかしくカイロを受け取る。
合成屋は義手なので、温かさはわからない。
とりあえず、一応生身の腹あたりにカイロを置いてみる。
「…ちょっとだけ温かくなった…かな?」
熱カプセル一つでは、微妙な程度しか温かくならないことがわかった。
合成屋がそんな実験をしているところに、
客が来た。
「お邪魔様」
「あ、花術師さん」
入り口には、品のいい花術師のおばあさんがいる。
「最近いろいろ合成しているそうですね」
「ええ…暇なもので」
合成屋は照れているらしい。
のっぺらぼうの仮面で表情はわからないが。
「これも、合成に使ったらいかがですか?」
と、花術師のおばあさんは、合成屋の義手の手に何かをのせた。
「…種?」
「ええ、種です。花の種らしいんですけれど。合成屋さんも試してみてはいかがですか?」
「あ、では、ありがたく頂戴します」
花術師のおばあさんは種を渡すと店を後にした。
そして、合成屋は、
あとで試そう、と、
もらった種を大事にしまった。
合成屋はいろいろ試したいらしい。