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第121話 実験

合成屋は、暇つぶしにいろんな物を合成する実験をし始めた。

分離は無理らしいから、

とりあえず合成というわけらしい。


ある日。

合成屋は、熱屋から熱カプセルを一つもらってきた。

そして、使い捨てカイロ…の、使い切って冷え切ったものをどこかから調達してきた。

「実験♪実験♪」

ひととおり楽しげに踊った後、

合成屋はいつもの儀式を始める。

合成する熱カプセルとカイロを『賢者の井戸』に放り込み、

もにゃもにゃと呪文を唱える。

そして、井戸を蹴飛ばす。


そして、合成された物が出てくる。

合成屋は、また温かくなったカイロを期待していた。

そして、合成された…カイロが飛び出す。


「おっとっと」

と、合成屋は危なっかしくカイロを受け取る。

合成屋は義手なので、温かさはわからない。

とりあえず、一応生身の腹あたりにカイロを置いてみる。

「…ちょっとだけ温かくなった…かな?」

熱カプセル一つでは、微妙な程度しか温かくならないことがわかった。


合成屋がそんな実験をしているところに、

客が来た。

「お邪魔様」

「あ、花術師さん」

入り口には、品のいい花術師のおばあさんがいる。

「最近いろいろ合成しているそうですね」

「ええ…暇なもので」

合成屋は照れているらしい。

のっぺらぼうの仮面で表情はわからないが。

「これも、合成に使ったらいかがですか?」

と、花術師のおばあさんは、合成屋の義手の手に何かをのせた。

「…種?」

「ええ、種です。花の種らしいんですけれど。合成屋さんも試してみてはいかがですか?」

「あ、では、ありがたく頂戴します」


花術師のおばあさんは種を渡すと店を後にした。

そして、合成屋は、

あとで試そう、と、

もらった種を大事にしまった。


合成屋はいろいろ試したいらしい。

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