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第119話 闖入者

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

赤く細かい細工の彫られた扉の向こうの世界の物語。


彼女は混乱していた。

理想的な恋人であろう人を前に、

どうしていいかわからず、混乱していた。

そんなところに、


バタン!


と、扉が開くような音がした。

そして、

「待てや!」

と、男の声がした。


やがて、彼女の足元に、

小さな狐が一匹やってきた。

そして、それを追って男がやってくる。

陰陽マークのシャツと、

黒の釣鐘マント。

長めの髪は後ろでまとめている。


狐は、しばらく彼女の足元で隠れていた。

そして、男は、

「おっかしぃなぁ…どこいったんやろ…」

と、あたりをきょろきょろする。

そして、あたりをきょろきょろした男が、何かに感づいたらしい。

「こいつは…」

と、呟く。


狐は、男が何かに気を取られている隙に逃げ出す。

男は狐の気配を見逃さなかった。

「待てや!」

と、追いかける。


狐と男の闖入者は、彼女をほったらかして追いかけっこをする。

そして、彼女は見た。

狐が理想的な恋人をすり抜けていくのを。

彼女は、目の錯覚かと思った。

しかし、男も理想的な恋人をすり抜けていく。


彼女は何が何なのかさっぱりわからなくなった。

いったい何が起きているのか。

突如現れた狐と男は何者なのか。


やがて、

「よっと、捕まえたで」

と、空間の隅っこで、男が狐を捕まえた。

そして、男が彼女のもとにやってくる。

「あんたの空間…混乱させてもうたな」

自分の空間?

この男は何を言っているのだ?


陽炎のような理想的な恋人。

そして、理想的な恋人以外見えなかった空間…

「混乱して…それでもわかりかけてるんやろ?」


彼女はおぼろげに答えに行き着こうとしていた。

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