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第116話 暇

探偵は暇をもてあましていた。

依頼がない時は大抵こうだし、

そもそも、依頼は少ないほうだ。


探偵は、探偵事務所で寝るのにも飽きたし、

助手の入れてくれるお茶も…美味だが飽きた。

探偵はそんなときは斜陽街をふらつくことにしている。

身体と勘をなまらせるよりはいい。

いつものコートとポケットに入ったタバコを確認すると、

探偵は斜陽街に出て行った。


探偵が斜陽街の路地を歩いていると、

何か、黒い不定形の物体がすごい勢いで駆けていくのを見た。

「なんだありゃ…」

と、探偵が呟くと、

「どいてどいて!」

と、女の声がした。

探偵はその声に圧倒されるようにどいた。

声の主は電脳娘々だった。

電脳娘々は、まっすぐに黒い物体を追いかけ、駆けていった。


探偵はそれを見て、

ふぅとため息をつくと、

「忙しいやつは忙しいものだ」

と、呟いた。


大体、斜陽街の連中が大忙しということは少ない。

電脳娘々もたまたまなのだろう。

しかし、あの追いかけられている黒い物体。

あれは何かいやな感じがしたなと探偵は思った。


「騒ぎになるな…きっと…」

探偵は呟くと、

また、斜陽街の路地を歩いた。

あてはないが、

あとで番外地の神屋にでも行こうかと思った。

勘が示しているような気がしたのだ。


今日も斜陽街は斜陽街だ。

騒ぎがあっても斜陽街。

いろいろと受け入れてくれるものだ。


「さぁて、電脳娘々のお手並み拝見」

探偵の勘は成功を示しているが、

それまでの過程は、

どうなるかよくわからなかった。

それも面白いと思った。


「どれ、一回りしたら神屋にでも行くかな」

探偵はそう言うと、

あてもなく斜陽街を歩き出した。

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