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第113話 銀色

魚のシキと、異邦人のクウは、斜陽街を歩いていた。

二番街のあたりだろうか。


よくしゃべるシキと、頷くことが多いクウだったが、

それなりのコンビになっているようだった。


彼等が路地を歩いていくと、

鎖を持った女性が向こうから歩いてきた。

人とぶつかることはよくない、と、

クウはよける。

「失礼」

と、女性は鎖を持って通り過ぎようとする。

表情は薄い。

シキの目に、女性の顔より、鎖がうつる。

そして、

「ちょっと待った!」

と、シキが女性に声をかけた。


「何か?」

女性が振り向く。

「お姉さん、その鎖、色がついてるね?」

表情の薄い女性の、目が見開かれる。

「わかるの?」

「ああ、俺は色を探している魚のシキだ。あ、こいつはクウ」

クウがぺこりと頭を下げる。

「そう、私は鎖師と覚えておいて。…で、色があるから何なの?」

「他でもない。その鎖の銀色を俺にくれないか?」

シキが申し出る。

鎖師はまたちょっと驚いたようだった。

そして、ちょっと考え、

「鎖に染み付いた分の銀色だったらいいわ。鎖本来の色は取らないでね」

と、言った。


鎖師の手の鎖から、

染み付いた銀色がシキにゆるゆると移っていく。

そして、鎖師の鎖は、鎖師の納得のいく鎖になり、

シキには、銀色が移った。


「ありがとな、鎖師さん」

「こちらこそ。これで納得のいく鎖になったわ」


鎖師は去っていった。


シキが鎖師を見送ると、

クウがシキをじっと見ている。

「また、俺に触りたいのか?」

シキがそう言えば、

クウは頷いた。


クウがシキに触れる。

クウに鎖の思い出が移ってくる。

何かを自分のものにしたい感じ…

『あの人』は自分だけのもの…

「クウよ、感じているのは多分、独占欲って奴だ。独り占めしたいって奴だろ」

微妙に違う気もするが、クウは頷いた。


そして、シキとクウはまた歩き出した。

クウは、あの時感じた『あの人』とは誰だろうと考えていた。

鎖の思い出とも違う『あの人』とやらは誰だろうと。


シキはクウのそんな違いに一応気がついていたが、素知らぬふりをした。

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