斜陽街を歩いていた螺子ドロボウ。
彼は、妙な二人組とすれ違った。
一方は気の強そうな女。
一方は気の弱そうな男。
螺子ドロボウは彼等に、独特の気配を感じた。
とくに、大事そうに持っている鞄から。
それは、奪ったものの気配。
二人組はどこかへ向かっているようだったが、
斜陽街の路地に戸惑っている風だった。
気の弱そうな男が、
螺子ドロボウを見つけると、
「すみませーん」
と、声をかけてきた。
螺子ドロボウは、気の弱そうな男と、
斜陽街の道順の話をした。
気の弱そうな男は、
螺子ドロボウに礼を言うと、
気の強そうな女と、目的地に歩いていった。
そして、螺子ドロボウは気がついた。
彼等が持っている鞄は確かに奪ったものの気配だが、
彼等が持っていた、緑色の細工の入ったものは奪った気配がしなかったと。
斜陽街に慣れていなく、
奪った気配がして…
そして、奪った気配のしないものを…
あれはがらくた横丁の匂いがしたな…
玩具屋のものか?
螺子ドロボウはそう思い返す。
「あいつらの気配も、斜陽街のそれになってきている気がするな」
螺子ドロボウはそう呟く。
住人になるか、
別世界へ行くか、
それは勝手な斜陽街。
それでも、住人が増えた方が、にぎやかでいいと螺子ドロボウは思った。
「本当に欲しいもの…」
螺子ドロボウは、ふと呟く。
あいつらの場合、奪ったそれではない気がするなと思った。
当然、自分が奪って歩く、螺子でもないだろうと思った。
「まぁ、気がつけばいいさ」
螺子ドロボウは飄々と斜陽街を歩いていった。