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第111話 気配

斜陽街を歩いていた螺子ドロボウ。

彼は、妙な二人組とすれ違った。


一方は気の強そうな女。

一方は気の弱そうな男。


螺子ドロボウは彼等に、独特の気配を感じた。

とくに、大事そうに持っている鞄から。


それは、奪ったものの気配。


二人組はどこかへ向かっているようだったが、

斜陽街の路地に戸惑っている風だった。

気の弱そうな男が、

螺子ドロボウを見つけると、

「すみませーん」

と、声をかけてきた。


螺子ドロボウは、気の弱そうな男と、

斜陽街の道順の話をした。

気の弱そうな男は、

螺子ドロボウに礼を言うと、

気の強そうな女と、目的地に歩いていった。


そして、螺子ドロボウは気がついた。

彼等が持っている鞄は確かに奪ったものの気配だが、

彼等が持っていた、緑色の細工の入ったものは奪った気配がしなかったと。


斜陽街に慣れていなく、

奪った気配がして…

そして、奪った気配のしないものを…

あれはがらくた横丁の匂いがしたな…

玩具屋のものか?

螺子ドロボウはそう思い返す。


「あいつらの気配も、斜陽街のそれになってきている気がするな」

螺子ドロボウはそう呟く。

住人になるか、

別世界へ行くか、

それは勝手な斜陽街。

それでも、住人が増えた方が、にぎやかでいいと螺子ドロボウは思った。


「本当に欲しいもの…」

螺子ドロボウは、ふと呟く。

あいつらの場合、奪ったそれではない気がするなと思った。

当然、自分が奪って歩く、螺子でもないだろうと思った。

「まぁ、気がつけばいいさ」


螺子ドロボウは飄々と斜陽街を歩いていった。

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