これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
雪の結晶の模様の彫られた扉の向こうの世界の物語。
あれから、見つかった武器庫から続々とアジトに武器が運ばれてきた。
少年達は、
散り散りになっている、アジトを持つ他のグループにも声をかけていった。
スイのもとへ、よそのグループのリーダーがやってくることも多くなった。
それでも、スイの雰囲気からか、
なんとなしに、スイがまとめることが空気で決まっていた。
そんな様子を、アジトの奥の部屋から、
アキはひっそりと見守っていた。
そうして、リーダー達がアジトの会議室になっているところで、
ある夜、会議を行い、
そして、決戦の日が決められた。
夜襲をすると決まった。
武器などを運ぶ夜が何度か繰り返され、
そして、決戦の夜。
スイはアキの部屋にやってきた。
「スイ…」
アキが見上げる。
「アキ、俺達は今夜、『あいつら』に戦いを挑む」
「…」
「帰ってこないかもしれない。それでも強く生きるんだ。太陽はまた昇るからな」
スイはアキの頭をわしゃわしゃとなでると、
部屋を出ていった。
アキは思っていた。
自分は何が出来るだろうかと、
やがて、出陣の大きな爆音が外から聞こえる。
一斉に少年達がバイクなどで走っていく。
アキはたまらなくなって、アジトから外に出た。
走っていく多くの少年達の、後ろ姿が見えた。
アキはスイ達、多くの少年達を守りたいという衝動にかられた。
思いは、身体の中で渦を巻く。
(自分の中の流れを信じるんだ)
どこかから声がする。
流れは、やがて外へと溢れて…
空にも行けるような浮遊感。
(そう、君なら空にも行けるはず)
アキは少しずつ浮いていく自分を感じた。
瓦礫の小石も浮いていく。
少しずつ、流れを修正して、自分を仰向けに浮かせることに集中する。
(おいで、昇っていくんだ)
その声に導かれて、
アキは体勢を変えると、
風より早く飛んだ。
そして、スイたちに追いつく。
「スイ!」
「アキ!」
『あいつら』の本拠地から攻撃がある。
銃弾は、アキが力ではじいていった。
「一気に突っ込むぞ!」
力に目覚めたアキと、スイ達少年達は、
一気に大きな建物に突撃していった。