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第110話 力

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

雪の結晶の模様の彫られた扉の向こうの世界の物語。


あれから、見つかった武器庫から続々とアジトに武器が運ばれてきた。

少年達は、

散り散りになっている、アジトを持つ他のグループにも声をかけていった。

スイのもとへ、よそのグループのリーダーがやってくることも多くなった。

それでも、スイの雰囲気からか、

なんとなしに、スイがまとめることが空気で決まっていた。


そんな様子を、アジトの奥の部屋から、

アキはひっそりと見守っていた。


そうして、リーダー達がアジトの会議室になっているところで、

ある夜、会議を行い、

そして、決戦の日が決められた。

夜襲をすると決まった。


武器などを運ぶ夜が何度か繰り返され、

そして、決戦の夜。

スイはアキの部屋にやってきた。


「スイ…」

アキが見上げる。

「アキ、俺達は今夜、『あいつら』に戦いを挑む」

「…」

「帰ってこないかもしれない。それでも強く生きるんだ。太陽はまた昇るからな」

スイはアキの頭をわしゃわしゃとなでると、

部屋を出ていった。


アキは思っていた。

自分は何が出来るだろうかと、

やがて、出陣の大きな爆音が外から聞こえる。

一斉に少年達がバイクなどで走っていく。

アキはたまらなくなって、アジトから外に出た。

走っていく多くの少年達の、後ろ姿が見えた。


アキはスイ達、多くの少年達を守りたいという衝動にかられた。

思いは、身体の中で渦を巻く。

(自分の中の流れを信じるんだ)

どこかから声がする。

流れは、やがて外へと溢れて…

空にも行けるような浮遊感。

(そう、君なら空にも行けるはず)

アキは少しずつ浮いていく自分を感じた。

瓦礫の小石も浮いていく。

少しずつ、流れを修正して、自分を仰向けに浮かせることに集中する。

(おいで、昇っていくんだ)

その声に導かれて、

アキは体勢を変えると、

風より早く飛んだ。

そして、スイたちに追いつく。


「スイ!」

「アキ!」


『あいつら』の本拠地から攻撃がある。

銃弾は、アキが力ではじいていった。


「一気に突っ込むぞ!」


力に目覚めたアキと、スイ達少年達は、

一気に大きな建物に突撃していった。

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