ヤジマとキタザワは、
病気屋にもらった処方箋を手に、
がらくた横丁にやってきた。
すれ違うのがやっとの細い路地に、
がらくたやダンボールがあちこちに積まれ、
配線や配管などは剥き出しになっている。
そんな中、入口と思しき扉があちこちにある。
ヤジマとキタザワは、細いがらくた横丁の路地を歩き、
薬師の店を見つけた。
「いらっしゃい」
扉をガラガラと開けて中に入ると、
デニムのワンピースの少女が挨拶した。
ぼさぼさの長い髪を後ろでしばっている。
ヤジマほどではないが、気の強そうな目をしている。
「薬師さん?」
と、キタザワがたずねる。
「うん…あ、処方箋?」
薬師がヤジマの持っている処方箋に気がついた。
「ああ、うん」
「ちょっと見せて」
薬師は処方箋を見て、勝手に頷くと、
「待ってて、この薬なら作ってあるから」
と、奥へ行った。
やがて出てきた薬師の薬を、ヤジマは飲んだ。
「にが…」
思わずヤジマが呟く。
「良薬口に苦し、です」
と、薬師に笑われた。
そこへ、
「お邪魔するよ」
と、くわえ煙草のひょろりとした男があらわれた。
「あ、玩具屋さん。もう、おもちゃ出来たんですか?」
「ああ、見たいって言っていたからね。持ってきたよ」
玩具屋のおもちゃとやらを、薬師は興味深くながめている。
「それじゃ…邪魔した」
と、薬を飲み終えたヤジマが立ち上がる。
「あ、君、ちょっと」
「なんだよ…」
少し元気になったヤジマが、玩具屋を睨み返す。
「いや、一番街のバーに行く予定はあるかな」
「バー?」
「ヤジマさん、お酒好きですよね」
キタザワがそう言えば、
「じゃあ、一番街のバーに、このおもちゃを届けてくれないかな。行くついででいいから」
「なんでそんな…」
「いいじゃないですか。俺が持っていきますよ。ついでに一杯何か飲みましょうよ」
「ふん…」
ヤジマは、人のいいキタザワがおもちゃを受け取るのを待ち、
薬師の店を、がらくた横丁を、あとにした。