目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第101話 水面

ここは斜陽街番外地の八卦池。

スカ爺がうとうとしながら、八卦池を覗き込んでいる。

池というからには水面があるのだが、

スカ爺はうとうとしても池に落ちることなく、

水面は今日も静かだった。


ざざざ…


水面がノイズのように微かに波立つ。

その音で、スカ爺が目を覚ましたようだ。

「おお…」

と、なんとも付かない声を静かに上げる。

そして、持っていた杖で池をかき回す。

池をかき回すと、ノイズが晴れ、クリアな水面になる。

「シャンジャーか…」

『ああ、俺だ』

池から声がする。

どうやら、通信をしているようだ。


『そっちに邪気が行ったと思うんだけど、それからどうだ?』

「孫が追いかけているようでござる…」

『やっぱりな…で、首尾はどうだ?』

「そちらに連絡がないようであれば、まだ追いかけているのでござろう…」

『そっかぁ…悪いな、そっちに迷惑かけて』

シャンジャーの声は悪びれていない。

そして、スカ爺も気にしていないようだ。


「これより、様々のところで、様々のことが起きる…」

『そりゃそうだろ、生きている以上、どっかで何かはあるさ』

「また風が吹くこともあろう…」

『斜陽街は人が来たり出ていったりすると、風が吹くんだったな』

「そうでござる」

『だったら、年中風が吹いているのか?』

「来ればわかる」

『生憎と、俺は電脳から出られないんでな』

水面からのシャンジャーの声が、くくっと笑った。


『電脳娘々にもメールしといたけど、機会があったら伝えてくれ。こっちの邪気は掃除し終わったと』

「わかった」


ざざざ…


水面がノイズのように波立った。

そして、また、深い池の水面に戻った。


そしてスカ爺は、

また、うとうとと八卦池のほとりで居眠りをしはじめた。


今日も水面は静かだった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?