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第100話 少年

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

雪の結晶の模様の彫られた扉の向こうの世界の物語。


アキが少年達のアジトに住み着いて、

何日かした。

少年達は無邪気なアキの相手をかわるがわるする。

少年達は心から楽しんでいるようだった。

アキは知らぬ間に少年達の癒しになっているようだった。


瓦礫になった町の、

そんなある夜のこと。


アジトに外からの風が入ってきて、

仲間が帰ってきたことを知らせる。

「遅かったな、何か見つけたのか?」

リーダーのスイが問い掛ける。

「武器庫を見つけた」

「保存状態は」

「こいつを見てくれ」

仲間は大きな銃を肩からおろす。

スイはしげしげとながめると、

「なかなか良好だな」

と、簡潔に感想を述べる。

「そんなのがゴロゴロしているところだ」

「爆薬とかはどうだ?」

「瓦礫になってしばらくするからな…湿気てるかもしれない」

「でも、火気には注意していったほうがいいかもしれないな…」

「ああ…」


アキはよくわからないなりに、彼等の会話を聞いていた。

わからないけれど、何となく物騒だということは感じていた。


「よし、明日は武器庫を捜索する。武器が整い次第、『あいつら』に攻撃を仕掛ける」

スイがそう言えば、

「了解」

「ラジャー」

と、声が上がった。


個室に戻ってきたスイに、アキがたずねる。

「『あいつら』に攻撃?」

「ああ、『あいつら』はこの町を瓦礫に変えたんだ。だから、『あいつら』に報復するんだ」

「この町…瓦礫…」

アキの頭が割れるように痛んだ。

「壊した『あいつら』…『コスモス』って言ってた…」

「『コスモス』?アキ、何でそんな事知ってるんだ?」

「わからない…わからないけどわかるの…」


その夜は、アキに痛み止めを飲ませて眠らせた。


少年達はちゃくちゃくと準備を整え、

『コスモス』と、呼ばれているらしい『あいつら』との決戦を待っていた。

そんな様子を、アキはスイからもらった赤いジャケットを握り締めながら見守っていた。

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