電脳娘々は邪気を追っていた。
(この方向は…番外地)
電脳娘々は感じていたが、
とにかく、追っていき、捕まらないことには話にならないので、
追っていくことにした。
一方、
こちらは番外地の人形師の住まい。
フランス人形、日本人形、様々の人形がところせましと並べられている。
黒い風が廃ビルにいた頃は、
思いを人形達が溜め込んでしまって、大変だったが、
今は落ち着いて、人形と対話したり、
他人をびっくりする術を考えていたりする。
黒いものが窓から飛び込んできて、
きれいなフランス人形に入り込んだのは一瞬だった。
フランス人形のまとっていた雰囲気が変わる。
フランス人形は無表情のまま、
人形師の首を絞めにかかる。
「エリー、やめなさい」
人形師がそう言うと、
人形がやめようとする。
しかし、中から無理矢理、首を絞めるように動かす力が働いているようだ。
ぎりぎりと人形から音がする。
「邪魔するよ!」
バタン!と、音を立てて扉が開き、
電脳娘々が飛び込んでくる。
「そこか!」
と、電脳娘々が飛びかかれば、
エリーというフランス人形から、
素早く邪気が抜けていった。
そして、また、窓から邪気は逃げていく。
「取り逃がしたか…」
電脳娘々は、ちっと舌打ちすると、
「邪魔して悪かった」
と、言い残して、人形師の住まいをあとにした。
残された人形師は、
電脳娘々や邪気のことなど忘れて、
荒らされた人形達を元に戻し、
エリーの修復にかかった。
人形師は、結局、人形がすべてなのだ。