斜陽街を歩き回っているヤジマとキタザワ。
キタザワがふと気がつくと、
ヤジマの足取りが重い。
「どうしましたか、ヤジマさん」
「だるい…」
キタザワはヤジマの額に手を当ててみる。
「ちょっと熱ありますね…どうしたらいいかな」
いつもなら強がりの一つもいうヤジマも、
どうも調子がよくないらしい。
キタザワは、すれ違った斜陽街の住人に声をかけた。
すると、
「熱があるなら、一番街の熱屋。病気にかかったなら、熱屋の隣りの病気屋に行きな」
という返事が返ってきた。
キタザワはヤジマをおんぶして、
一番街の熱屋に向かった。
熱屋はすぐに見つかった。
店内に入ると、
女性が一人で店番をしていた。
「あの…熱屋…さん?」
「ええ」
「この女性が熱を出してしまって…」
キタザワがヤジマを座らせる。
ヤジマはぼんやりしながら、されるままになっている。
熱屋はヤジマの胸のあたりに手を当てる。
「平熱あたりまで下げますね」
と言うと、ヤジマと熱屋の間に、数個、オレンジ色のカプセルが出来た。
手品かとも思ったが、
斜陽街とはそういうものだとも思った。
隣りの病気屋に行くと、
病気屋のもっさりとした熊のような主人がいた。
そして、ヤジマを一目見るなり、
「ああ…培養していたのに感染したようだね」
と、言われた。
「菌が一部盗まれたらしくて…それにかかったんだろう。熱は下げてもらったのかな」
ヤジマはとりあえず頷く。
「なら、処方箋書くから、三番街のがらくた横丁というところの、薬師をたずねるといい」
病気屋はさらさらと処方箋をしるし、
ヤジマに渡した。
「この街って…変な街だな」
「そうかもしれませんね」
ぽつぽつ話しながら、ヤジマとキタザワは三番街に向かった。