「珍しいことも、あるものだな」
がらくた横丁の玩具屋は、そう言うと、目の前の、緑できらきらしたおもちゃの修復にかかった。
持ち込んできたのは、
一番街のバーのマスターだ。
そんなに手間のかかるものではない。
ただ、きらきらしているところの修復がちょっと厄介なだけだ。
おもちゃ、いや、置物に近いか。
とにかくそれを修復しようと思った。
玩具屋の手に馴染む感じからして、
これは随分壊れたまま置いておかれていた気がする。
それを、わざわざ直してくれとバーのマスターは言ってきた。
長い事壊れたままで、今更…とも思うが、
心境の変化でもあったのだろう。
それに、そんな事は、あまり追求するものでもないと思った。
愛用の煙草に火を付け、
ふかす。
「よし」
と、短く言い、煙草を揉み消し、工具を取り出してきて、
修復にかかる。
今のところ他に仕事もないし、
これに専念できそうだと玩具屋は思った。
玩具屋は斜陽街では、古株ではない。
しかし、どこからか、
バーのマスターには娘が…という話を聞いた。
このおもちゃはその娘さんのものかもしれない。
娘さんに返すのだろうか。
それならそれで、丁寧に修復しないといけないなと思った。
手際よく、工具がおもちゃを修復していく。
緑色のきらきらしたおもちゃ。
一瞬、きらきらした微笑みの少女が脳裏をかすめていった。
なるほど、相当思いが詰まっているのだなと玩具屋は納得した。
煙草の匂いの満ちた玩具屋の店の中、
大した苦労もなく、しばらくすれば、
おもちゃは修復されそうだ。