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第96話 修復

「珍しいことも、あるものだな」

がらくた横丁の玩具屋は、そう言うと、目の前の、緑できらきらしたおもちゃの修復にかかった。

持ち込んできたのは、

一番街のバーのマスターだ。


そんなに手間のかかるものではない。

ただ、きらきらしているところの修復がちょっと厄介なだけだ。

おもちゃ、いや、置物に近いか。

とにかくそれを修復しようと思った。


玩具屋の手に馴染む感じからして、

これは随分壊れたまま置いておかれていた気がする。

それを、わざわざ直してくれとバーのマスターは言ってきた。

長い事壊れたままで、今更…とも思うが、

心境の変化でもあったのだろう。

それに、そんな事は、あまり追求するものでもないと思った。


愛用の煙草に火を付け、

ふかす。

「よし」

と、短く言い、煙草を揉み消し、工具を取り出してきて、

修復にかかる。

今のところ他に仕事もないし、

これに専念できそうだと玩具屋は思った。


玩具屋は斜陽街では、古株ではない。

しかし、どこからか、

バーのマスターには娘が…という話を聞いた。

このおもちゃはその娘さんのものかもしれない。

娘さんに返すのだろうか。

それならそれで、丁寧に修復しないといけないなと思った。


手際よく、工具がおもちゃを修復していく。

緑色のきらきらしたおもちゃ。

一瞬、きらきらした微笑みの少女が脳裏をかすめていった。

なるほど、相当思いが詰まっているのだなと玩具屋は納得した。


煙草の匂いの満ちた玩具屋の店の中、

大した苦労もなく、しばらくすれば、

おもちゃは修復されそうだ。

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