これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
緑の葉の描かれた扉の向こうの世界の物語。
少年は狐を追っていた。
黄色い土の道の果て、
少年と狐の前には、
浅い川が流れていた。
狐は、ぴょんぴょんと小さな石の出っ張りを踏みながら渡っていき、
少年は、浅い川をざぶざぶと靴を濡らしながら渡った。
川を渡り終えて、
少年は靴の中の水を捨てる。
狐は逃げずに、その行動を見ている。
少年が靴を履き、
はっと、狐に気がつく。
狐はそこでようやく逃げ出す。
黄色い土の道がまた続く。
周囲はいつのまにか林になっていた。
それでも狐は止まらない。
ちらちらとさしこむ木漏れ日の中を、
少年と狐は駆けていった。
やがて、少年と狐の前に、
また、川が現れる。
今度はさっきと違い、
かなり深そうな、流れの速そうな川だ。
川には、細い木が倒れていて、
狐は臆することなく、
細い木を渡っていった。
そして、川の向こうでちょこんと座って待っている。
少年は…川の中ほどに岩が水面から出ているのを見つけた。
少年は閃き、
十分、川と距離を取り、
少年は全速力で駆け出した。
川のぎりぎりで踏み込み、ジャンプ。
そして、川の中の岩を蹴り、
ぎりぎりで川を飛び越える。
川を飛び越えた、その端っこで、
バランスを崩しかけたのは、ご愛敬。
少年はふぅと息を吐いた。
狐はそれを見ていた。
やがて少年が気がつき、
狐はまた逃げ出した。
疲れを知らぬ彼等は、
どんどん見知らぬ風景を走っていった。