電脳空間の中。
自称・超級風水師のシャンジャーは邪気を追っていた。
彼の言う邪気とは、電脳におけるバグやウイルスなど、
ついでに人の思念の悪いところも混ぜてある。
そんな、悪いものの凝り固まったものと思っていただければよい。
電脳空間の…空気はないが、空気のちりつきのようなもの。
そんなわずかな変化をとらえ、
シャンジャーは電脳空間を駆ける。
この邪気は、電脳空間だとコピーを量産できるらしい。
劣化コピーを特製の剣で削除しながら、
黒く、ちりちりとした邪気を追っていた。
(やっぱり、本体をどうにかしないことには…)
キリのないコピーとの格闘にも疲れた。
それにしても、本体のコピーを作る速度や、逃げる速度は半端ではない。
(どこか、取り合えずコピーの作れないところに追い込むしか…)
シャンジャーは考え、
「ちょっと迷惑かけるかな…」
と、呟くと、邪気を追い込みはじめた。
キーワードは…まずは水。
電脳空間に、水のイメージがはられたところに追い込む。
シャンジャーのよく知った水に追い込む。
そして、その水から、
邪気を、水面のほうへ、
とある出口に追い出しにかかる。
…八卦池…
斜陽街番外地の、スカ爺のいる池だ。
そこは電脳と通じている池だ。
邪気は電脳空間の行き場がなくなり、
大量にコピーを作って姿をくらますと、
八卦池の水面に向かって飛び出していった。
シャンジャーは、その出口から、邪気の本体が電脳空間から出ていったことを確認すると、
電脳娘々に連絡を取った。
「あ…俺。邪気が一匹、八卦池経由で出ていっちゃって…そう、捕まえて欲しいんだ…」
電脳娘々が何か騒いでいたが、気にせず通信を切った。
斜陽街に行けば、取り合えず電脳的なコピーは出来なくなる。
あとは…電脳娘々次第。
あの邪気は逃げ足が速い。
(さて、とりあえず、お手並み拝見かな)
シャンジャーは、残りの劣化コピーを削除に、電脳空間を駆けていった。