神屋に神様が住み着いた。
男の神様と女の神様。
幸せそうに融合して。
二人で一つになって。
神様達は、自分が特殊な糸を紡げることに、気がついた。
男の神様も、女の神様も。
不思議な色合いの、頼りない糸。
「編んでみようか」
そう言い出したのはどっちだったか、今ではわからない。
神様達は糸を編んで、
不思議な編み物にしている。
この編み物が誰かの手に渡り、
何かの役に立つなら、神様達は幸せだ。
今日も斜陽街には風が吹く。
神屋の窓が小さく鳴る。
神様の編み物は、
一区切りついたらしい。
編んでいた指から、ふっと糸が切れる。
そして、不思議な色合いの編み物がそこに落ちる。
「こんなものかな」
「そうね」
そして、二人で微笑みあう。
やがて誰かが神様の編み物を見に来るかもしれない。
最近よく出歩く夜羽だろうか。
近所の探偵だろうか。
それとも、扉からやってきた誰かだろうか?
または、電網系のあなただろうか?
男の神様と女の神様。
二人の糸が絡み合う。
頼りない糸達。
どこかへ繋がる糸達。
それは神様達の紡いだ、頼りない物語。
終わらない。
この物語も。
どこかへ編まれゆく糸。
またどこかで糸が編まれ、
一つの形になるかもしれない。
その時はどうか、糸の行く末を見守ってもらいたい。
神様達はまた糸を編み出した。
ここは斜陽街。
懐かしいけれどどこかずれた街。
これは斜陽街の物語。
記憶の底の物語…
ではまた、斜陽街で逢いましょう。