自称、超級風水師。
シャンジャーはそう名乗っている。
彼は電脳街の風水を正す仕事をしている。
電脳の風水というのも漠然としている。
シャンジャーに言わせれば、「いわゆるバグ取り」らしい。
プログラムには流れがある。
その流れを妨げるようなものを取り除く作業をしている。
シャンジャーはアルコールというグループに属している。
アルコールというグループは、アクセスしている者に癒しや夢、妄想を提供している。
シャンジャーはそっちの方ではあまり指名がない。
ウォッカやジンなどの方がよく呼び出される。
だからシャンジャーは風水の方に専念できる。
「鳥篭街でもいくかな…」
彼が行こうとしているのは、電脳街の一部。
たくさんのサイトが集まっている…集合住宅のようなところである。
彼はいつもはそんなところに行かない。
風水が乱れぎみだからだ。
今回はたまたま、乱れた風水を正してみるかなという気になった、それだけだ。
かかとを鳴らすと、鳥篭街へ飛んだ。
彼の視界には、ちょっと歪んだビルが幾つも目に入った。
「予想より歪んでるなぁ…ほっとくとサーバーダウンするぞ」
彼は手近なところからプログラムを見てまわる。
「これは…ここを…ちょちょいと…」
プログラムを編みなおしたり、
「ここは…邪魔」
と、特製の剣で切り落としたりする。
「む、違法者発見」
彼はあるビルの一室に怪しい薬を売買しているサイトを見付けた。
すぐさま通報。
あとはサイバーポリスがどうにかしてくれる。
シャンジャーが鳥篭街から電脳街の大通りに戻ってくると、
端末にメールが届いていた。
『こんにちは。薬師のリィです…』
「ああ、あの子か…斜陽街の子だったよな」
どんな子なんだろう?
彼は想像する。
斜陽街の者といえば、電脳娘々くらいしか接したことがない。
いずれ逢う機会もあるだろう。
そう思い、彼は返信した。
風水師の仕事は意外と地味だ。
シャンジャーはそれでも、この仕事が嫌いではない。
むしろ、好きだ。