「はい、これが毎食後に一錠。忘れないで飲んでくださいね。お大事にぃ」
少女が客に薬を渡す。
少女は薬師。名前をリィという。
黒いぼさぼさ髪を後ろで一つにまとめ、デニムのワンピースを着ている。
そして、気が強そうな目をしている。
ここは三番街、がらくた横丁の薬師の店だ。
薬師の仕事は…説明するのは簡単だ。
要は薬を調合すればいい。
それには知識が要る。
薬師のリィは、どこで得たかは知らないが薬の知識は十分にある。
病気屋からまわされたり、またはそうでないお客を相手に、結構繁盛しているらしい。
薬師はよく、一番街の電脳中心に行く。
薬師宛てのメールはここで預かってもらっているからだ。
「こんにちはー」
元気良く挨拶。
「いらっしゃあい」
と、電脳娘々が出迎える。
「ね、ね。シャンジャーからメール来てる?」
「来てるよ。待っててね…端末に落とすから」
リィはその時間をわくわくして待っている。
「『今日もバグ取りしてました。電脳風水師の仕事は意外と地味です』だって。リィは、結構カッコイイお仕事だと思うんだけどなぁ」
「電脳に携わるのはシャンジャーに限らずみんな地味よ」
「むぅ、シャンジャーきっとカッコイイもん」
「妄想は夜羽のとこにでも持って行ったらぁ?」
「娘々ひどぉい」
そして二人でケラケラ笑った。
「リィはね、薬師のお仕事好き。誇り持ってる」
「誇り…ってわかってて使ってるの?」
「失礼な!……って、実はわかんない。てへへ…」
「あたしにはあんたの方がよくわかんない…」
「そぉ?」
リィは屈託なく笑った。
「それじゃ次来る時は例の薬持ってきてね」
「ああ、腰痛の薬ね。娘々座りっぱなしだもんねぇ」
「大声で言うんじゃないの!」
「えへへー」
リィは笑って誤魔化すと、ばいばぁいと電脳中心をあとにした。
これから腰痛の薬の調合だ。
お客が来ていたらそっちもやらないと。
やることは結構あるのだ。
リィは薬師の仕事がやっぱり好きだ。