斜陽街の二番街に、「洗イマス」と看板の出された店がある。
通称洗い屋。
何でも洗ってくれる店だ。
「いつも使っているものほど洗わなきゃ」
店員の女性はそう言う。
人懐っこい笑みの女性だ。
はじめてこの店に行くと、洗い物リストを渡される。
服、食器、部屋…
それなりのお金さえ出せば何でも洗ってくれる。
リストの下の方に目を通すと…
小腸、大腸、背骨…
などというものがある。
「初めての人にはちょっとショックが大きいみたい。でも、ここは臓物も洗うのよ。ね、いつも使っているものほど洗わなきゃ」
どう洗うかは企業秘密で教えてくれなかった。
「やっぱりショックが大きすぎるみたいで…最近ソフトにマッサージもはじめたんですよね」
ショックが大きいというのは内臓洗浄のことなのだろう。
「石鹸つけてマッサージ。やってることは洗い屋でも、マッサージ効果で更に気持ちよくなれるんですよ」
これで売り上げもあがるといいんだけどなぁ…と、店員は言った。
「最近、血まみれの男の人がよく来るようになったんですよね。払ってくれるものは払ってくれるからいいんですけど…何のお仕事しているんでしょうね?」
店員はそれ以上追求はしなかったようだ。
「服洗って…シャワーを貸して…髪の毛洗ってあげるんですよ。身体に傷はないみたいなんですけどねぇ」
黒い髪の黒スーツでサングラスかけてる人なんですよ、と店員は言う。
「髪洗ってあげてる時は、気持ち良さそうなんですよね」
あたしもあんな弟欲しいな、店員はそういって笑った。
「洗イマス」の、看板にかけて、店員は今日も何かを洗っている。
「汚れているほど張り切っちゃうんですよ。きれいにしてやるぞ、みたいな」
店員は人懐っこく笑うと、
「いつも使っているものほど洗わなきゃ」
そう言い、仕事に戻っていった。