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第23話 洗濯

斜陽街の二番街に、「洗イマス」と看板の出された店がある。

通称洗い屋。

何でも洗ってくれる店だ。


「いつも使っているものほど洗わなきゃ」

店員の女性はそう言う。

人懐っこい笑みの女性だ。


はじめてこの店に行くと、洗い物リストを渡される。

服、食器、部屋…

それなりのお金さえ出せば何でも洗ってくれる。

リストの下の方に目を通すと…

小腸、大腸、背骨…

などというものがある。

「初めての人にはちょっとショックが大きいみたい。でも、ここは臓物も洗うのよ。ね、いつも使っているものほど洗わなきゃ」

どう洗うかは企業秘密で教えてくれなかった。


「やっぱりショックが大きすぎるみたいで…最近ソフトにマッサージもはじめたんですよね」

ショックが大きいというのは内臓洗浄のことなのだろう。

「石鹸つけてマッサージ。やってることは洗い屋でも、マッサージ効果で更に気持ちよくなれるんですよ」

これで売り上げもあがるといいんだけどなぁ…と、店員は言った。


「最近、血まみれの男の人がよく来るようになったんですよね。払ってくれるものは払ってくれるからいいんですけど…何のお仕事しているんでしょうね?」

店員はそれ以上追求はしなかったようだ。

「服洗って…シャワーを貸して…髪の毛洗ってあげるんですよ。身体に傷はないみたいなんですけどねぇ」

黒い髪の黒スーツでサングラスかけてる人なんですよ、と店員は言う。

「髪洗ってあげてる時は、気持ち良さそうなんですよね」

あたしもあんな弟欲しいな、店員はそういって笑った。


「洗イマス」の、看板にかけて、店員は今日も何かを洗っている。

「汚れているほど張り切っちゃうんですよ。きれいにしてやるぞ、みたいな」

店員は人懐っこく笑うと、

「いつも使っているものほど洗わなきゃ」

そう言い、仕事に戻っていった。

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