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第6話 少女

これは昔の物語。

斜陽街に一人の少女がいた。

名前は分からない。


少女には幼なじみの少年がいた。

彼等はよく二人で遊んだ。

少女はきらきらとよく笑った。

少年はその笑顔が好きだった。


ある時少女は重い病に倒れた。

何日も熱が下がらず、少女はガタガタ震えていた。

少年はヒステリックな大人に囲まれている少女を、遠くから見守ることしか出来なかった。

雨の日も、風の日も、少年は少女の家まで通い、

窓の外から彼女を見守った。


その病は、医者にも完治できないものだったらしい。


その時から少女は時を止めた。


少年は成長した。

小柄だった少年は成長するに従い大男になった。

熊のようだなんて言われた。

少女は変わらなかった。

女と少女の間の、中途半端な年齢でと成長も老化も止まってしまった。


少年は悔しかった。

病気のことを何一つ知らない自分に腹が立った。

だから少年は病気のことを知りたいと思った。

一体何が原因なのか。

どうしてそうなったのか。

消えた彼女の時間を取り戻せるかもしれないと思った。


そして少女は…

あの病以来、変わった力を身につけてしまった。

彼女は熱を操れるようになった。

他人から熱をカプセルとして取り出すことができるようになってしまった。

他人に手をかざすと、直径3cm程のオレンジ色のカプセルが手と肌の間に生じる。

1カプセルが1度らしい。

彼女は今、そのカプセルを売ったりすることで生活している。

人は彼女をこう呼ぶ。

『熱屋』…と。


彼女は今でも斜陽街の一番街に店を構えている。

もし斜陽街に行くことがあれば、彼女を訪ねてもいいかもしれない。

一番街、病気屋のすぐ隣りだ。

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