「よう、ハリス」
「どうした、エド。いよいよ学園だな」
「ああ」
「まさか俺が入学することになるとは思わなかったが」
「だよな」
ハリスは俺たちよりひとつ年上だったけれど、都合、一緒に入学することになった。
学年の年齢は正確ではなくて、こうして遅れ年で入学する子も多い。
元々ハリスはトライエ高等学校へ入学する気はなかったのだが、俺エドや周りがすすめてきたため、しぶしぶ入学することになったのだ。
「どうだ、制服」
「スラム街の子供に着せるにはいいもの過ぎるな」
「こういうの、馬子にも衣装っていうんだぜ」
「へぇ、物知りだな、エドは」
「まあね」
俺は前世知識持ちだからね、一応。
ブレザーに近い制服だが装飾があり、ちょっと貴族っぽい。
まあいいところのおぼっちゃんたちが着るから派手なものだ。
ハリスの家といえば、ボロ屋で有名だが、あれから近所にもう少しまともな小屋を建てて移り住んでいた。
こうしてスラム街の家々もちょっとずついい家に更新されつつあった。
ハリスのばあちゃんはあれから健康を取り戻して、まだ元気にやっている。
「女の子たちは、かわいいな」
「だよな」
「えへへ、エドちゃん、好き」
「エド君、どうです、私たち」
「エド君、制服好きみゃう?」
女子の制服はセーラー服とブレザーのいいところどりみたいなデザインのもので、セーラーの襟がついてて、チェック模様などが入っていて、ちょっとやはり派手だ。
なかなかどうして、こうして着てもらうとかわいいもんだ。
ハリスもちゃっかり鼻の下を伸ばしている。
スカートはミニが標準みたいで、ニーソックスをガーターでつっていた。
ゴムがないのでガーターが標準装備だった。日本でも大正時代とかそうらしい。
なんだかこうして見ると学園ラブコメみたいだな。
俺の前世はあまりよい高校生活を送っていなかったみたいだけど、今は両手に花どころか三人、おっとエレノア様もいるんだった。
「エドくーん」
ほら向こうの方から制服姿で女騎士様を連れたエレノア様が走ってくる。
「おーい、エレノア様」
「もー、今度から一緒の学校なんだから、そんな他人行儀ですよぉ」
「エレノア様はエレノア様でしょう」
「まあそうだけど」
「ミーニャちゃんたちみたいにエレちゃんって呼んでもいいんだよ」
「俺はいいの」
「もー」
「「あははは」」
みんなで笑う。
みんなの制服姿が揃った。
「んじゃ、行きましょうか」
「お、おう」
エレノア様の掛け声で、ぞろぞろ歩いていく。
スラム街のすぐ外の道に馬車が停まっていたのでそれに乗り込む。
「いよいよだな」
「だね、エドくーん」
貴族街の入口の西側にあるトライエ高等学校の正面玄関で馬車からみんなで降りた。
いよいよ、入学式だ。
どんな学校生活が待っているか、楽しみだ。