大イノシシを倒して冒険者ギルドへ納品した。
大きかったのでお肉は自分たち用の分の残して他と魔石は売ってしまった。
「お肉ぅ、お肉ぅ、イノシシ肉ぅ」
帰り道、すでにミーニャの頭の中はイノシシの肉のことでいっぱいらしい。
「ふふ、お肉美味しそうでしたもんね」
解体の時に見えたブロック肉の時点でミーニャはヨダレが垂れそうだった。
ラニアも微笑んでミーニャの様子を見ている。
あの時は死ぬかと思ったが無事倒せてよかった。
そしてまずは薄切り肉の生姜焼きにするのだ。
日本で生姜焼きといえば醤油ベースだけど、まだ醤油はない。
それからまだ砂糖とコショウは買っていなので調味料としては使えない。
塩とショウガはあるので、これをベースに山椒を少し散らすことにする。
「ただいま」
「はーい、お帰りなさい」
メルンさんに迎えられて家に戻ってきた。
さて料理に取り掛かろう。
お肉のブロックを取り出し、ミスリルのナイフで薄切りにしていく。
適度に脂身のついたお肉はなかなか美味しそうだ。
本来なら生の肉は切りにくかったりして、地球だと凍った状態で機械でスライスしたりする。
しかしミスリルのナイフは
しゅんしゅん切れる。
手まで切れそうなのでいつも細心の注意が必要だ。
ウサギ肉や鶏肉はあまり薄切りにしない。
恐らくぱさぱさ系のお肉なのでバラバラになってしまうのだと思う。
イノシシ肉はほぼ豚肉なので、よくスーパーの特売とかで売っている豚の薄切り肉に近いイメージのものができるのだ。
すり鉢で細かくした野生のショウガと塩のタレにイノシシ肉を絡ませる。
フライパンに少量のオリーブオイルを引いて、お肉を焼いていく。
じゃわああ。
お肉が焼ける音がする。
薄切りなので火の通りも早い。
片面をほとんど焼いたらひっくり返して裏側も焼く。
再びじゅわああといい音がしてくる。
「「(ごくり)」」
ミーニャもそれからラニアも喉を鳴らして凝視していた。
こんなお肉、見るのも食べるのも初めてだもんな。
すでに主食のイルク豆はできているし、サラダなども準備が終わっている。
お肉とショウガの匂いがあたりに広がっていく。
「お肉、お肉お肉お肉ぅっ!」
「もうミーニャちゃんったら、うふふ」
今にも飛び回りそうなミーニャを俺とラニアで見て笑う。
ラニアのほうを見たらふふっって軽く笑って微笑んでくれる。
なんだこれ、めっちゃかわいいぞ。
お肉妖精ミーニャをなだめて、焼けたお肉をお皿に移す。
妖精さんは興奮してさっきから上下運動の繰り返しに忙しい。
「にゃあ、にゃにゃにゃにゃ」
「さて挨拶して食べようか、ラニアよろ」
「はいでは。ラファリエール様に感謝して、いただきます」
「「いただきまーす」」
「うみゃあああ、お肉だああ、おいちぃ」
「ふふ、お肉、美味しいです」
お肉を食べる。
今日は初日でお肉もいっぱいあるので山もりになっている。
お肉妖精さんはつぎつぎと口に放り込んでもぐもぐしている。
口が小さいのでほっぺまで膨らんで頑張って噛んで食べているので、リスみたいでかわいい。
ラニアはそこまで一度に口に入れず食べ進めているけど、よく見るとけっこう食事のスピードそのものは速い。
しっかり噛んでよく食べてくれ。
いっぱい食べて大きくなぁれ。
美少女になるんだぞ。
「これが、本当のお肉!」
「ああ、薄切りだから柔らかくて食べやすいだろ」
「うん」
「そうですね。そういう工夫も美味しさの秘密なんですね」
おうよ。四角い大きなお肉も食べ応えあって美味しいけど。
薄切りにして柔らかく焼いたお肉も美味しい。
どっちも俺は好き。
つきあわせでネギを焼いてある。
こちらは甘味があり、しょっぱいお肉と交互に食べると美味しい。
味が濃いなと思ったら、イルク豆を食べる。
もしくはサラダのタンポポ草とサニーレタスをむしゃむしゃする。
箸休めでフキの煮物なんかも食べる。
ギードさんとメルンさんも満足してくれたようだ。
「ごちそうさまでした」
みんなお腹が膨れるほど食べた。
たまには大捕り物も悪くはない。
怖いのは勘弁してほしいけど。
いやほんと、豆だけの食事とかよくしてたよな。
今ではもうそんなの考えられない。
絶対豆だけだと完食もきつい。
それが一週間続くんだ。日曜日には干肉とパンが食べられるとはいえ。
日曜日のメニューがなかったら俺は発狂してそうだ。
お金もお肉も手に入って、こうして生活が豊かになる。
ありがとう転生神。
ありがとう鑑定、アイテムボックス。
それからミーニャとラニアもありがとう。
直接言うことはあまり機会がないけど、好きだよ。
(終わり)