ポーションの本場といえば、エルフ領だった。
それがエルダニアが崩壊して、ヘルホルン山のルートの通行が強行軍になっていた。
今はエルダニアが復活したことにより、一度エルダニアに物資を置いて、そこから王都へ送れる体制になっている。
つまり王都やさらに向こうのアジベルリア帝国方面にポーションを出荷するときは、ここエルダニアを通るのだった。
という授業を領主のギードさんから受ける。
「みんな、いいかな?」
「なるほど」
「にゃは、いいよ、パパ」
「いいですよ。理解しました」
「えへへ、にゃうにゃう」
猫たちは理解してるんだか、してないんだか。
「そこで材料の薬草、ファースト草をポーションにしてみようか」
「え、なに実験ですか?」
「そうだよ」
ということでギードさんの指導の元、ポーションを作るところを見学する。
最初の薬草という意味のファースト草。
普通の草にしか見えないが、あまり見かけることはない。
たまぁにその辺にも生えていることがある。
「これを刻んでね、沸騰したお湯に入れるんだ」
「はい!」
みんなじっとビーカーのような瓶を見つめる。
段々と葉っぱがシナシナになっていき茹でたホウレンソウみたいになった。
「さらにそのまま茹でるんだ」
「へぇ」
「ドキドキ」
みんなそわそわと瓶を見続ける。
すると次第にファースト草から成分が出てきたのか、色が透明から緑色に変化していく。
「液体が緑色になったら完成、あとは冷ます」
「へぇ」
「すぐに冷ますとよくないから、自然に冷えるまで待つんだよ」
「ふぅん」
魔道コンロの出力を止め、そのまま様子を見る。
薄緑だった液体がさらに濃い緑へと変化していく。
「これで完成」
「やった」
ビーカーのようなモノにはポーション液が溜まっている。
「さて、指を怪我している子はいるかな?」
「うーん、みんな擦り傷くらいはあるよ?」
たまにヤンチャなので手を切ったりする。
ヒールも使えるものの、面倒でそのままだったりする。
「それじゃ少しずつ分けて、みんなで手を洗ってみよう」
「「「はーい」」」
まだほんのりと暖かいポーションを手に掛けていく。
少しずつ、ゆっくりとだ。
「なんだか変な感じ」
そう、なんだろう、内側から温まるような優しさを感じる。
これがポーション。
「どう?」
「みんな、お手々つるつる!」
「すごい、にゃ」
「すごいですね」
「にゃは、すごい」
女の子たちはみんなで喜んでいる。
地球ではついにできなかった即効性の治療薬ポーション。
これが草を茹でるとかいう簡単な方法で実現できる異世界にはびっくりだ。
非常に興味深い。
是非、学園ではもっと研究したい。
俺たちは十二歳になると学校へ通うことが決まっている。
トライエ高等学校だ。
色々なことが学べるだろう。今から楽しみだ。
「それでこちらが市販のポーション」
箱からポーションを慎重に出す。
葉っぱの緩衝材に詰められている。
「これがポーション瓶」
「へぇ」
いわゆるフラスコ型をしている。
大きさは普通のフラスコよりは小型だ。
たくさん飲んだらお腹がタプタプだろうけど、これくらいなら大丈夫だろう。
コップ一杯分くらいか。
ガラス瓶なのだけど、底に魔法陣が書かれている。
実はこれ、魔道具の一種なのだ。
動力の魔石は使われていないけど、魔石をインクに溶かした魔法ペンで書かれていて、周りの魔素を吸収して効果が発動する。
赤いインクだ。魔石が赤いのだろう。
それは状態維持をする魔法陣だった。
つまり劣化を抑えることができる。
といっても魔素から返還される魔力は少ないので効果は小さい。
さらに口の部分は、木の栓がしてあり、さらに布でしっかりと封がされている。
高いだけあって厳重だ。
それでも紐が出ていて、それを引っ張るとビリビリと布が破けて開けられるらしい。
緊急時にすぐ開封できないと困るもんね。
「これ作れるようになるかな」
「あはは、そのうちできるようになるよ」
「そうですかね」
「練習すればね。興味ある?」
ギードさんが聞いてくる。
「まあ、そこそこ」
「冒険者でもいいし、錬金術師もいいだろう」
「そうだね」
錬金術師エド。なるほど悪くはない。
ちょっと真っ黒のローブとか着て、怪しい感じで。
裾には金の刺繍で魔法陣が刻まれていて、なんだかすごい感じの。
なるほど。黒髪黒目の黒ローブか。
それはなかなか絵になるぞ。
「ぐへへ」
「エドちゃん、悪い顔してる」
「あははは」
「エド君……」
ミーニャには言われるし、ラニアには白い目で見られていた。
いいだろ。ちょっとくらい憧れがあっても。
ということで錬金術の第一歩を見学したのだった。
今度は自分たちでやってみたいな。
山芋、塩かつお
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味噌、醤油