お醤油と味噌の製作により、まず味噌汁が導入された。
たまにスープの代わりに飲むことがある。
ただこちらの世界のスープは具をたくさん入れてシチューみたいにメインにすることがある。
味噌汁だったら別にご飯とオカズが欲しいというのが日本人感覚なのだろうか。
それで醤油がどうしても欲しかったメニューがある。
それは「醤油ラーメン」だ。
味噌や塩も悪くはない。塩といっても鶏ガラだったりして、出汁が重要になってくるのは同じだけど、醤油ラーメンが食べたい。
俺は考えた。
まずこちらの世界に鰹節まんまの物はなかった。
日本でいう鰹を塩漬けにして乾燥させた塩鰹に似ているものならある。
つまり干し肉の鰹バージョンだと思ってくれていい。
それを王都からトライエ市との間をよく往復している商人に発注しておいたのが届いた。
「ぐへへ、塩鰹だ」
「エド、変な顔してる」
ニヤついているのは自覚している。
ミーニャが面白がって顔を覗いてくる。
塩鰹とオオカミの骨をベースに出汁を取った。
「なにかな~なにかな~♪」
ミーニャが待ちきれず歌い出す。
みんなもニコニコしながらそれを見て待ってくれている。
メンマはない。
チャーシューは、オオカミ肉を醤油で煮込んで作ってみた。
はじめてにしては思ったよりそれっぽくなったので満足している。
海苔。
覚えているだろうか。川海苔で作った板海苔が残っていた。
あとネギはある。
俺はネギたっぷりなのも好きなので、いっぱい入れる。
千切りは大変なのでメイドさんに手伝ってもらった。
さて出汁の大鍋ができたので、それを器に移して醤油を入れてスープを完成させた。
麺は乾麺だ。本来はパスタ用だけど細麺をほんの少し長めに茹でるとラーメンぽい感じの硬さになるので、これで代用とする。
ストレート麺より縮れ麺のほうが好みだったような気がするが、ないものはしょうがない。
さぁ麺がゆで上がったぞ。
スープに麺を入れる。
もうすでにラーメンぽい。ここに切ったチャーシューとたっぷりのネギを入れて、海苔を添えて、はい完成。
俺が見本を見せて、あとはお手伝いのメイドさんにやってもらう。
俺はみんなの誘導だ。
「どうだ」
「なにこれ?」
「あはは、これはラーメンっていう料理」
「ラーメン!」
「ラーメン、ですか」
「ラーメンみゃう」
みんな聞いたことないだろう。当たり前だろうけど。
この世界にラーメンが爆誕した瞬間であった。
「ラファリエール様に感謝して、いただきます」
「「「いただきます」」」
たまには略式だけど、神様に感謝を述べておこう。
みんな様子を見つつ、まずスプーンで半透明の澄んだ赤茶の液体を飲む。
「おいしいぃ」
「美味しい、です」
「みゃう、美味しいですみゃう、みゃううあう」
シエルがとてもびっくりしているけど、他の子も目を丸くしていた。
出汁と醤油の旨味でとても美味しいスープになっていた。
今度は麺をすする。
俺が結局我慢できず箸を持ち込んで、一人で使っているのをいつの間にかみんなも真似して使うようになった。
ということでみんなお箸を使っている。
「おいち」
「うん、うん」
「みゃうみゃう」
まだ箸をうまく使うのに苦労しているけれどなんとか食べる、ラーメンの麺の小麦とスープの合わせ技は反則的に美味しい。
今回は出張でトライエのエレノア様のところに作りに行くわけにもいかないので、黙っておこう。
もし次来たときに出せるのなら出してもいい。
もぐもぐ。
普通のスープだけより麺があるのでお腹もいっぱいになる。
みんな一生懸命に食べて今ではお腹をさすっていた。
「もう入らないみゃう」
食いしん坊妖精たちは、すっかりお腹ぽんぽん妖精になり果てていた。
これはこれでかわいいけど、なんともいえない。
小ラーメンだけどメイドさんたちの分もあるので、みんなで少しずつラーメンを試食していた。
「まぁ、とっても美味しいですね」
「またエド様が、変なものを思っていたけど、これは美味しいです」
こんな感じに好評だった。
醤油があったら一度はやってみたい醤油ラーメン。
今回無事にできた。できれば半月に一回くらいは食べたい。
難しそうだけど豚骨や味噌にも挑戦してみてもいいかもしれない。
背脂たっぷりの豚ラーメンとかにも興味はある。
ミーニャたちも美味しいものを食べて、だいぶほっぺがぷにぷにになってきた。
前は骨が浮き出そうなほどガリガリだったので、だいぶ改善されてきている。
まだお腹がでっぱるほどデブにはなっていない。
成長期なので身長はちょっとずつ伸びているようだ。
小さい子も可愛いのだけど、成長して美少女になったところも見てみたいもの。
それではより良い食生活を願って、地球の聖句を唱える。――