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136.エレノア様と魔物肉狩り


 エレノア様と護衛の女騎士の人たち三名を連れて歩く。

 女騎士さんの隊長を前から務めているシルリエットさんたちだ。


「それじゃあ狩りに行きますよ」

「はいですの」


 エレノア様が元気に声を上げる。

 さて城郭都市の門から外に出る。

 ここから先は街道を逸れてエクシス森林へ入る。


「森なんて久しぶりですわ」

「そっか、そっか。俺たちもちょっと王都へ行ったから久しぶりだね」

「うんっ、エドちゃん」

「そうですね」

「みゃうぅ」


 春の森はそれほど寒くもなく過ごしやすい。

 新芽が出ていて綺麗な黄緑が広がっていた。

 中には白、黄色、赤などの花も咲いている。


「お、森のほうが城内よりちょっと遅いんだな、ほらフキノトウ」


 小さめのフキノトウがあちこちに生えている。

 採り尽さないように適度に残しつつ回収する。

 この前天ぷらにしたけど、また食べたい。今度はエレノア様にも分けてあげないと。

 きっと食べたことがないだろうし。でもほんのり苦いから大人の味かもしれない。

 エレノア様は気に入ってくれるだろうか。いつもいいもの食べてそうだし。


 こういう新芽系の食材はあっという間に大きくなるので、数日で採れなくなったりするから、チャンスだと思ったらその時に採るのがいい。


「獣狩りに来たんじゃないんですの?」

「おっと、そうだった。気配とかどうかな? シカは近くにいない感じだね」


 もうしばらく森を探索する。


「みてみてエド、マイマイ!」

「おおぉ、雨の日じゃないけど、珍しい。森の中にいるんだっけ」

「うんっ」


 大カタツムリのマイマイを捕獲。

 雨後のマイマイとか言って台風の過ぎた後に平原によく出てくる習性があるのだけど、普段は森にいるのだ。

 貝の仲間なのでアサリやハマグリのような出汁が出て食べると美味い。


「マイマイなら食べたことがありますわ。コリコリしているのよね」

「そうですね」


 うん、そんな感じ。味はハマグリで、食感はアワビやトコブシのような貝の筋肉質に似ている。

 内臓部分もあるけれど捨ててしまう。主に食べるのは足というか地面と接する部分なのだ。


 ガウガウッ。


「うぉお」

「きゃああ」


 エレノア様がびっくりして叫ぶ。

 それに敵さんもびっくりして一瞬怯む。ウルフだ。

 筋張っていてただ焼くだけではあまり美味しくはないんだけど、肉を叩いて合い挽きのハンバーグに入れるととても美味しい。


「おりゃあ」


 俺が剣で近い個体を攻撃、致命傷が運よく入ってウルフは倒れる。

 ウルフは群れで行動するものなので、あと三匹いる。


「ファイアー!!」


 ラニアがすかさず短縮詠唱の火魔法で攻撃を加える。


「えいっ」


 ミーニャも杖を振り下ろして別の個体を殴りつける。


「私だってエレノア・ビーム!!」


 エレノア様のいかにも高そうな高級魔法杖からビームが飛んでいき最後の一匹に命中する。

 光魔法なのかなたぶん。ミーニャが使う聖魔法とも違うようだった。

 エレノア様も普通に攻撃できるのね。よく考えたら杖持ってるし当たり前だった。

 先に確認するのがセオリーだけど、護衛の騎士たちもいるし大丈夫だと思っていたので確認していなかったのだ。

 俺も手を抜きすぎていた。


 ミーニャが相手をしたウルフはまだ息があって再び攻撃してきたのでシルリエットさんたちが剣で打撃を与えてやっつけた。


「ふぅ、これで終わりかな」


 俺たちは全員で一度静かにして周りの様子を窺う。


「うし、討伐完了だ。予定ではベアかワイルドボアだったけど結果オーライだね」

「うんっ、終わりだよん」

「はい、お疲れ様です」

「終わりみゃう」

「皆、お疲れ様ですわ」


 さてアイテムボックスに放り込んで持ち帰る。

 方角を確認して森をほぼ最短距離でエルダニアまで戻ってくる。


 エルダニア城内に入って冒険者ギルドへ行き解体をしてくれる職員にウルフをお願いする。

「ウルフの解体をお願いします」

「あいよっ」

 職員の兄ちゃんは明るい人でささっとウルフの状態を確認するとさっそく解体していく。

 俺たちはこの作業はできなくはないがまだまだ下手なので専門家がいるなら任せたほうがいい。

 そして肉を受け取った。


「ウルフ肉ゲットしたからさっそくやろうか」

「やったぁあああ」

「ハンバーグですね」

「もちろんハンバーグにゃう」

「楽しみにしていますわ」


 エレノア様と女騎士さんが見守る中、領主館ホテルの厨房の隅を借りてウルフ肉をミンチにしていく。

 普通ならミンチマシーンがあるのだろうけど中世風異世界にそんな機械があるはずもない。

 包丁でひたすらお肉を叩いていく。

 それでもミキサーとかよりはマシでミンチ肉にすることができた。

 これに以前のクマ肉やイノシシ肉などの残りを足して合い挽きにしていく。

 タマネギなども入れてこねこねしてハンバーグにしたら焼くだけだ。


「焼くぞっ」

「にゃーう」

「はいっ」

「みゃうぅ」


 こうしてみんなが見守る中ハンバーグを焼いていく。

 すでに周りにはいい香りが漂っていて食いしん坊妖精が待つには気の毒な状態になっていた。


「うぅぅぅ」


 今日は妖精たちに加えてエレノア妖精女王様までいるので、みんなで羨ましい目で俺とハンバーグを見つめてくる。

 その視線に負けずに頑張ってハンバーグを焼いてしまうと、そのフライパンで特製ソースを作る。


「えへへ、今日は和風ハンバーグだぞ」

「なにそれ?」

「えっと醤油ベースのタレに大根おろしなんだ」

「美味しそう!」


 ミーニャがうれしそうに飛び跳ねる。本当に妖精の羽が生えてそうだ。

 こうして完成したハンバーグをみんなの前に並べた。

 ぐぅうう。

 どこからか腹の虫の音が聞こえてくる。

 誰のだろうかよく分からないが、食べたいという意思は感じる。


「ラファリエール様に感謝して、いただきます」

「「「「いただきます」」」」


 妖精たちとそれから護衛の騎士さんたちも含めてみんなでハンバーグを食べた。


「美味しいぃぃぃ」

「美味しいですっ」

「みゃうみゃうぅう」

「美味しいですわ」


 ウルフ狩りからのハンバーグと充実した一日を過ごしたのだった。

 今回はエレノア様もいたので少し緊張していたがエレノア・ビームもあってウルフとの集団戦もなんとか戦えた。

 なかなかの経験値になったのではないだろうか。


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